かつてスバルは、軽ワンボックスカーの車体に3列シートレイアウトを有し「7人乗車」を実現した斬新なモデルを販売していました。一体どのようなクルマだったのでしょうか。

全長3.5mでも「7人」乗れちゃうスゴい車!

 2024年4月現在、スバルの国内での新車ラインナップにおいて3列シートを搭載したモデルは存在しませんが、過去を振り返ると3列シートを持つモデルも数多くラインナップしていました。
 
 しかもその中には、わずか全長約3.4mのミニマムボディに7人が乗車でき、さらに4人で車中泊まで可能という驚異的なモデルもあったのです。

 それが、1983年に登場したワンボックスカー「ドミンゴ」。

 同車は、軽ワンボックスカーである4代目「サンバー」をベースに開発され、ボディサイズは全長3425mm×全幅1430mm×全高1900mm(4WDモデル)と、全高を除けば軽自動車をわずかに膨らませたようなコンパクトな車体を採用します。

 このボディサイズは、ベースのサンバーを大型のバンパーやサイドモールの追加などで拡大したもので、ボディシェル自体はサンバーそのまま。

 つまり室内空間は軽自動車サイズのままだったのですが、そこはスバルが巧みなシートレイアウトを考案したことで、驚きの“7人乗車”を可能としていました。

 そんな初代ドミンゴのパワーユニットは、最高出力は48馬力を発揮する1リッター直列3気筒エンジンで、これもベースのサンバー同様にリアに搭載。

 絶対的なエンジン出力自体は現在の軽自動車並といったところですが、後のマイナーチェンジで排気量を拡大したほか、駆動方式はRRの2WD車にくわえてワンボックスカーとしては日本初となるフルタイム4WDも用意したため、悪路を含む山岳部や降雪地帯を走行するユーザーから支持を獲得します。

 そしてドミンゴは1994年には全面刷新し、待望の2代目へと進化。

 こちらも初代同様にサンバー(5代目ディアス)をベースとしたモデルで、3列シートも変わらず搭載しています。

 また2代目のボディサイズも全長3525mm×全幅1415mm×全高1995mm(4WD)と、全長がわずかに拡大されたものの、使い勝手は初代とほぼ変わらないコンパクトさを維持。

 そんな2代目ドミンゴ最大の注目点は、ポップアップルーフを備え、そこを就寝スペースとして利用すれば最大4人が車中泊できる仕様「アラジン」を、メーカー純正として用意したところでしょう。

 アウトドアや車中泊がブームとなった近年から振り返ると、いかにスバルに先見の明があったのかと驚かされます。

 この2代目ドミンゴですが、当時は豪華かつ乗用車ライクな新世代のミニバンが流行し始め、各社から新型車が続々登場するなかで時代の波には乗り切れず、残念ながら1998年末に生産を終了しました。

 またドミンゴ同様に、各社も軽ワンボックスカーをベースとする超小型ミニバンのラインナップを縮小したため、現在ではこのサイズ感で7人が乗れるモデルは国内市場には存在しません。

 しかし、自宅に繋がる道や駐車場が狭かったり、小さなクルマでアウトドアに出かけるような用途にピッタリはまるクルマを求める声は現在再び盛り上がりつつあります。

 このような声が大きくなり、かつてのように小型3列シート車の需要が本格的に高まれば、いつか根強い支持を受けるドミンゴの名前がスバルから復活する可能性は否定できません。