身体や知的など障害の区別がなく誰でも参加できる軟式野球チーム「ダンデライオンズ」が昨年、神戸市で発足し、ルールや道具、練習方法を工夫しながら活動している。監督で特別支援学校教員の井上聞三(いのうえ・ぶんぞう)さん(52)によると、障害者野球では身体障害者が中心のチームが多いといい、「どんな障害がある人でも、野球をやれる環境がないと諦めず一緒に楽しめる場になれば」と話す。(共同通信=伊藤愛莉)

 3月中旬、神戸市内のグラウンドでダンデライオンズと、地域の少年野球チームOBらの練習試合があった。ピッチャーの坪井優磨(つぼい・ゆうま)さん(16)=神戸市=は左手首から先が欠損しており、手首に引っかけられる特殊なグラブを用いて投球した。下肢障害があるバッターがボールを打った際は、後ろで控える別の選手が一塁に代走した。ルールを覚えていない選手が出塁すると、ベンチから監督らが「今走れ」などと指示を飛ばしていた。

 坪井さんは「同じ境遇の人とプレーできるのは当たり前じゃない。この環境が楽しい」と話す。知的障害がある外野手小林愛斗(こばやし・あいと)さん(12)=神戸市=は「野球をやりたかった。技術も教えてもらえてうれしい」と笑う。

 井上さんは以前は身体障害者の野球チームのコーチや監督を務めていた。人数が集まらず、活動が難しくなる一方、知的、発達障害の生徒や保護者からは「野球がしたいが練習する場がない」と相談を受けるように。「障害の内容で区切るとルールづくりや練習はしやすいが、人が集まりにくい。区切りをなくせば活動しやすいのでは」とチームを結成した。

 現在、チームには10〜50代の男女28人が所属。月に2、3回、神戸市内3カ所のグラウンドで練習している。車いすの選手らが対応できるようバントや盗塁は禁止とし、代走を取り入れた。知的障害がある選手にルールを覚えてもらうため代走を任せることもある。

 井上さんは「苦手な部分を補い合いながら、練習に励んでいる。将来はどんな障害があっても参加できる大会などを開きたい」と意気込んだ。