1966年の静岡県一家4人殺害事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)の姉ひで子さん(91)は裁判所に行けない弟に代わり、再審に出廷してきた。「58年闘ってまいりました。私も91歳、巌は88歳でございます」。22日開かれた公判の最終意見陳述で、改めて弟の無実を強調。長年の闘いに勝ち、冤罪が晴れる判決を待ち望んでいる。

 支援者によると、袴田さんはこの日、ひで子さんと暮らす浜松市の家で近所を散歩するなど穏やかな時間を過ごした。拘置所に長年収容されたため、拘禁症状が残り、裁判の話題を出すと混乱することがある。ひで子さんは「静岡に行くのは今日でおしまい。夕方、帰ってくるね」とだけ伝えたという。

 ひで子さんは最終意見陳述で、袴田さんが拘置所から母親に宛てた手紙を朗読した。「今朝方、お母さんの夢を見ました。お母さん、遠からず真実を立証して帰りますからね」。約束を果たせず、釈放後も心は癒えていないと訴えた。

 結びには「巌を人間らしく過ごさせてくださいますようお願い申し上げます」と述べ、声を震わせた。