最終回に多く残る謎は未回収のまま?

 1話で心をつかまれ、作品を視聴していたものの、「完結の仕方」にしこりが残るというのは、「アニメ鑑賞あるある」のひとつでしょう。今回は、物語終盤に意外な展開を迎え、衝撃的な終わり方をした作品を振り返ります。

●『ワンダーエッグ・プライオリティ』

 2021年の冬アニメとして放送された『ワンダーエッグ・プライオリティ』は、『未成年』や『高校教師』などの人気ドラマの脚本を手がけた野島伸司さんがはじめてアニメ脚本に挑戦したオリジナル作品です。

 本作はいじめが原因で不登校となっている主人公「大戸アイ」が、ふとしたことをきっかけに「エッグ」の世界に入り込み、自殺してしまった親友「長瀬小糸」を生き返らすために、毎話登場するトラウマを具現化した「ワンダーキラー」という怪物と戦うストーリーでした。

 アイは自分以外に「エッグ」の世界で戦う3人の少女と出会い、それぞれの目的のためワンダーキラーとの戦いを繰り広げていきます。作画や脚本の評価が高かった本作でしたが、最後は思わぬ形で終わりました。

 物語終盤、アイはパラレルワールドに存在するもうひとりのアイに出会います。もうひとりのアイは、小糸と出会っていない世界線のなかで学校のいじめに耐えられず自殺をしていました。そのことを知ったアイは、いじめから救ってくれた小糸の存在を改めて痛感し、「エッグ」の世界で求められている「エロスの戦士」として戦いを続けることを決意します。

 小糸の自殺の真相や、中盤からキーポイントとなる人工知能AI「フリル」の結末など未解決な謎は、全12話放送後の特別編に持ち越しとなりました。その特別編は、前半に物語の総集編、後半に小糸の自殺の真相などが明かされています。

 しかし、アイたちは「エッグ」の世界での戦いをいまだに続けており、全ての元凶であるフリルとの決着はつかずじまいで物語を終えました。ネット上では「序盤がよかっただけに結末は納得いかない」「肩透かしに感じた」と批判的な声が多い一方、「推測、考察の余地が多くて考察するのが楽しい」と評価も二極化しているようです。

●『魔法戦争』

 2011年から2015年まで刊行されたスズキヒサシさん原作のライトノベル『魔法戦争』は、2014年にTVアニメ化されました。

 本作の物語は、男子高校生の主人公「七瀬武」が、学校で倒れていた崩壊世界の少女「相羽六」を介抱するところからはじまります。そして、六の勘違いで魔法をかけられてしまった武は、魔法使いになってしまうのでした。

 その後、魔法学院に転校した武は魔法を駆使した激しい戦いに巻き込まれていきます。そんな本作は、前半は魔法アクションのアニメーションやお色気シーンなどが好評だったのに対し、物語後半はストーリーが急ぎ足になっていました。

 とくに最終回にあたる、第12話「世界からの消失」の展開は急です。武と敵キャラ「月光」との激しい戦闘が繰り広げられます。武が月光にトドメを刺し、世界は平和に向かっていくと思いきや、場面が変わり武は過去に飛ばされ物語が終わりました。

 この展開に作中、過去に飛ばされた武は「…んだよ…意味が分かんねえ」と頭を抱えますが、この時多く視聴者が「そのセリフはこっちが言いたい」と思ったことでしょう。そんなこともあってか、武のこのセリフはネットミームとしてSNSで使われるようになりました。

 本作の衝撃的な結末について、ネット上では「最終回以外は見応えあっただけにもったいない」「最後だけでなくエピソードが飛び飛びになる部分もあり、作品を理解するのが難解だった」といった声が出ており、困惑した人も多かったようです。

「くまみこ 壱 - くまぼっくす -」(KADOKAWA メディアファクトリー) (C)2016 吉元ますめ・KADOKAWA刊/「くまみこ」製作委員会

物語終盤に主人公が精神崩壊した衝撃作

●『くまみこ』

『くまみこ』(原作:吉元ますめ)は、原作マンガ2013年から「月刊コミックフラッパー」(KADOKAWA)にて連載が開始され、2016年にTVアニメ化された作品です。熊手村という村を舞台に、神社の巫女をする主人公「雨宿まち」と、彼女の後見人であるヒグマ「ナツ」の日常を描いています。

 物語は都会にいきたい少女と人語を話すクマが一緒に暮らすスローライフコメディで、一見ゆるい日常系アニメと思いきや、最終回で衝撃的な結末を迎えました。

 これまで都会の学校に進学するため奮闘してきたまちは、ご当地アイドルコンテストに出場することを決めます。そのコンテストで特別賞に輝いたまちでしたが、突如自分への視線に恐怖を感じ、「石を投げつけられた」「田舎者とバカにされた」と被害妄想を起こして、あこがれだった都会の高校に行くことを諦めてしまうのでした。

 急な「鬱展開」にも驚きますが、他にも視聴者を困惑させたシーンがあります。それはまちにコンテスト出場を促した、彼女の従兄弟で役場に務める雨宿良夫のセリフです。彼は作中、熊出村に伝わる生贄の昔話を引き合いに出し、その生贄のように村の代表として頑張ってほしいと発言するシーンが描かれました。

 このシーンは原作にはなく、アニメ版に改変した描写で放送終了後、原作者の吉元先生も公式ブログで苦言を呈しています(現在は削除)。

 最後はハッピーエンドのような雰囲気で終わりますが、視聴者からは「最終回が狂気的すぎるだろ」「毎週癒されていたのに闇深く終わって残念」といった声が数多くあがり、こちらも物議を醸しました。