2024年4月から、相続登記が義務化されました。

不動産の所有者が亡くなった場合、その不動産の名義を相続人に変更するため、法務局に申請することを「相続登記」と言います。

これまでは任意だった相続登記ですが「所有者不明土地」の解消のため、過去相続分までさかのぼって罰則付きで義務化されるようになりました。

土地建物の相続は家族間トラブルの「あるある」ですが、今後相続登記の義務化をめぐってさらに不安を感じている……というケースもあるようです。

50代の義姉と80代の姑のふたり暮らしの義理実家

Aさん(関東在住、40代、主婦)は大学時代に知り合い、大手銀行に勤める夫と結婚二人の子供を育てながら、銀行員にはつきものの転勤で、全国を飛び回る生活を長く続けています。

夫はもともと地方の出身で、大学進学をきっかけに関東に来ていたこともあり、Aさんにとっての義理実家とは年末年始か盆のどちらかに数日顔を出す程度のお付き合いが長く続いていたそうです。その義理実家では数年前に夫の父が亡くなり、未婚で派遣社員や契約社員を転々としてきた50代の姉と80代の母が二人で暮らしています。二人とも健康上の問題はなく、このまま元気で長生きしてくれたらと思っていたのですが……。

……それってつまりどういうこと!?

コロナのためにここ数年は間隔が開いたり、夫だけで帰省する年もあったりしたのですが、久しぶりに家族4人そろってお正月にゆっくり義理実家に滞在したときのこと。

義理の母がAさん夫婦を前に、あるお願いをしてきました。

「いつ転勤が落ち着くかはわからないけれど、どちらにしても将来実家に戻るという予定はないだろう。お父さんは気にしていたけれど、今時そんな時代ではないし、娘も私も今のところ元気だから、私のことは気にしなくていい。ただ、この家に住まなくてもいいけれど、長男だからやっぱり相続はしてほしい。お墓と家、少なくとも姉が生きているうちはこのままで維持管理を任せたい」

元々夫は将来実家に戻ってくると予定したこともなく、漠然と「家は姉が暮らしているから、自分たちは相続放棄をすればいい」と考えていただけに、思いもよらなかった依頼にビックリ。

その場では「まあ、まだ元気なうちにそんなこと考えなくても……」と曖昧な返事をしたものの、夜になって夫婦ふたりになってから一気に色々なことが気になり始めました。

「家に住まなくてもいいけど相続はするって、どうしてお義姉さんの名義じゃダメなのかな??」
「お義姉さんはずっとこの家に住み続けないかもしれないってこと?結婚の予定があるの??」
「お義姉のためにこの家の税金とか修繕費とかを私たち家族が負担してって言うことかな?お義母さんの面倒はお義姉さんが見るんだから、お義姉さんの面倒を見てちょうだいっていう話??」

Aさんは次から次へと疑問が出てきますが、夫は相変わらず「まだまだ先の話だし」と真剣になってくれません。

相続登記が義務化になると聞いて不安倍増

基本的に相続に配偶者が口出しをするものではない、と考えているAさん、結局その場では義理の母や義理の姉に疑問をぶつけることなく帰省は終わったそうですが、その後テレビのニュースで相続登記の義務化のニュースを知り、さらに不安な日々をすごす羽目に……。

「放置していたら罰則なんて、ことなかれ主義&先送り体質の夫に任せていたら不安でしかない……早めに相続放棄のやり方とか調べておいた方がいいのでは……??」

配偶者の実家の不動産相続、口を出しても出さなくてもモヤモヤが発生してしまうものなのかもしれません。

(まいどなニュース特約・中瀬 えみ)