2023年の年末、群馬県動物愛護センターに、ボロボロになったプードルミックスが収容されました。ひどくやせたその犬は「リコッタ」と名づけられました。

県内を彷徨っていたところを保護されたそうです。飼い犬と思われますが、おおよそ愛されていたとは思えない様子。収容期限が過ぎても飼い主が名乗り出ることはありませんでした。

動物愛護センターはお正月であっても委託職員は来ていますが、どうしてもお世話する人の数が少なくなります。また、保護などはお正月明けになることもあるため、保護団体・Delacroix Dog Ranch(以下、D.D. Ranch)のメンバーは「せめてリコッタだけでも」と申し出てお正月前に急遽引き出すことにしました。

「久々にヤバいワンコが来た」

飼い主に捨てられ、恐怖を抱えながらひとりぼっちで彷徨っていたリコッタの心の傷はそう簡単には癒えません。リコッタは引き出したメンバーの家で過ごすことになりましたが、家に着いた後、けたたましくずっと吠え続けました。

多くのワンコの世話をしてきたメンバーは、「久々に手ごわいワンコが来た」と思う一方、「大丈夫。ここまでに背負った心の傷の倍返しでたっぷり甘えさせてあげる」とし、根気強く接する覚悟を決めました。

甘えていたかと思いきや急に「僕もう寝ます」

当初こそ大荒れのリコッタでしたが、メンバーからのたっぷりの愛情、そして他のワンコたちとのコミュニケーションから、数日後には「あれ。ここは悪い場所じゃないかも」「むしろ僕を甘やかせてくれる人たちなのかも?」と察してくれたのか、徐々に本来の社交的で、甘ん坊な性格を見せてくれるようになりました。

少しずつ心を開いてくれるようになったリコッタに目を細めるメンバーでしたが、警戒心が解けると別の問題も浮上しました。健康を取り戻したリコッタはとにかくヤンチャでマイペースなのです。

椅子の上に登り、テーブルの上に仁王立ちして何かを訴えてきたかと思いきや、他のワンコの寝床に勝手に潜り込んできて嫌がられたり。「すごい甘えん坊」と思いきや、眠くなると「そろそろ時間なんで僕もう寝ます」と、自らサークルに入り一気に就寝。でも、この一連の様子がとにかく愛らしく、リコッタが何かを訴えるたびに、ついつい甘やかせてしまうのでした。

推定9歳でも、実年齢よりも心身ともに若めかも

推定9歳のリコッタですが、心身とも実年齢より若いように映ります。冒頭で触れたような医療ケアは引き続き実施することになりますが、それ以外は特に問題ありません。

当初こそ「久々にヤバいワンコ」と思われたリコッタですが、ここまでのお世話で、明るくヤンチャでマイペースという、本来の姿を見せてくれるようになりました。この愛くるしさなら、今度こその「ずっとのお家」「ずっとの家族」を見つけられる日は、そう遠くないようにも思いました。

(まいどなニュース特約・松田 義人)