「ベル・エポック−美しき時代  パリに集った芸術家たち」が現在、山梨県立美術館(甲府市貢川1)で開催されている。(甲府経済新聞)

 山梨県立美術館で「ベル・エポック展」 パリの原点紹介、国内初公開作品も

 ベル・エポックは19世紀末から第一次世界大戦開戦ごろまでの華やかなパリ文化とその時代を指す。美術家、音楽家、文学者などが集まり、互いに交流し、多様な芸術を育んだ。本展では、その時代とその後の作品を紹介し、文化の様相を重層的に紹介。展示の中心となるワイズマン、マイケル夫妻のコレクションは国内初公開となる。

 展示は全4章で構成。第1章では「古き良き時代のパリ−街と人々」と題し、さまざまな芸術分野を通して「移ろいゆくパリの生活」を紹介。19、20世紀初頭のパリは、普仏戦争と第一次世界大戦の間の平和な時代で、芸術家たちが実験的な試みに挑んだ時代だった。ブルジョワジー(中産階級)が台頭し、貴族に代わって文化の中心に立った。特に、女性が文化のけん引役として活躍し、サロンを開いて文化人や芸術家を招待した。同コーナーでは、サロンの様子を再現した展示を行うほか、華やかな帽子、装飾品などを並べ、当時の女性のファッションの特徴を伝える。

 第2章の「総合芸術が開花するパリ」では、芸術家たちの相互交流がうかがえる作品を紹介する。当時、芸術家たちはパリ北部のモンマルトル地区に集まった。モンマルトルには新興のキャバレーやダンスホールが軒を連ね、画家たちの作品の題材になった。芸術家同士の書簡の展示もあり、サルトル、チャイコフスキーなど幅広い分野にわたって著名な人物の名が並ぶ。同展では、当時作られた詩に合わせて作曲された音楽を詩の朗読とともに聞くことができるブースも設け、その時代の文化の交流に触れることができるようにする。

 第3章は「華麗なるエンターテインメント 劇場の誘惑」。ベル・エポック期のモンマルトルでは劇場が大きな役割を担った。自然主義的な小説を舞台化する動きもあり、特に、テアトル・リーヴル(自由劇場)では野心的な演目が上演され、上演目録用の挿絵や舞台装飾に、さまざまな芸術家が関わった。アメリカ人ダンサーのロイ・フラーを描いた、シャルル・モランの連作など、舞台芸術の多様性が分かる展示を行う。

 第4章は「女性たちが活躍する時代へ」。世紀末のパリではフェミニズム運動も盛んで、社会的自立を目指す女性が登場した時代。女性画家シュザンヌ・ヴァラドンの作品や、女優サラ・ベルナールのために作られた冠など、芸術の分野で活躍した女性たちに関わる作品を展示する。活動的なスタイルに移行した女性のファッションは、女性の社会進出を象徴するという。

 学芸員の下東佳那さんは「観光地として知られている今のパリは、ベル・エポック期の延長にあり、エンタテーメントの中心地としてのモンマルトルやムーラン・ルージュはその時代にできたもの。この展覧会を通して、パリの原点を知ってもらえる。個々の作家たちの交流が分かる作品や、必ずしも有名な作家の作品でなくてもその時代を反映しているもの、光るものがある作品も多い。絵画だけではなく、服飾、工芸などの作品も見ることができるので、この時代をいろいろな側面から楽しんでもらえれば」と話す。

 開館時間は9時〜17時。月曜休館。観覧料は、一般=1,000円、大学生=500円。6月16日まで。