「卵は1つのカゴに盛るな」
「砂(いさご)長じて巌(いわお)となる」
「命金には手をつけるな」

有名な相場格言に「押し目待ちに押し目なし」という言葉があります。「押し目」とは上昇基調にある相場が一時的に下落する局面を指しますが、勢いのある上昇相場の場合、この「押し目」の機会を待っていても株価が下がらず、結果として買うチャンスを逃してしまうことがあります。

反対の状況を表す格言として「戻り待ちに戻りなし」という言葉もあります。これは一旦下落した相場が反発して元の水準まで戻ってきたら株を売ろうと考えていたものの、期待に反して株価がどんどん下がってしまい、売る機会を逃してしまうようなケースを表しています。

古くから伝わる相場格言には、このように投資タイミングを捉える難しさを伝える言葉が数多くあります。昔から適切なタイミングで投資することは難しいと感じる投資家が多かったのかもしれません。

今年からNISA制度の拡充と恒久化が図られた影響もあって、筆者も親戚や友人から投資について相談を受ける機会が増えています。筆者の親戚や友人の大半は、まだ証券口座を開設していない投資初心者なのですが、皆一様に「こんなに株価が上がってからでは遅いのでは?」「今から買うと損してしまいそうで怖い」という懸念を示します。彼らがこのように感じる背景には「株式投資はチャンスを捉えて売買しないと儲けることができない」という考え方があり、これは多くの日本人に共通の考え方なのかもしれません。

また、「自分には投資経験がないので、上手く売買する自信がない」という懸念も伝えてきます。しかし実際はプロ投資家であっても上手にチャンスを捉えて売買を行って利益を上げ続けることができるのは、ほんの一握りであり、多くは投資タイミングの巧拙だけに依存しない投資を行っています。これから投資を始める方も、以下の考え方を実践すると投資成果の向上が期待できると思います。

まず、「最良の1銘柄選んで投資する」という考え方は捨てましょう。最良の銘柄を選別することは非常に難しく、かつ株価が上昇する銘柄は頻繁に代わります。余程のセンスや才能がない限り、成功し続けるのは困難だと言えます。

次に「短期間で大儲けする」という欲も捨てましょう。もちろん、投資した直後から株価が大きく上昇する幸運に恵まれる可能性はありますが、売買のタイミングを適切に見極めることは、一流のプロ投資家であっても容易ではありません。時間を掛けて着実に資産を増やすという前提で投資を行いましょう。

最後に、差し当たって生活等に必要のない余剰資金で投資をしましょう。使う時期が決まっている資金で投資を行うと、その時期までに投資成果を上げなければ、というプレッシャーが掛かってしまいます。投資と博打は似て非なるものです。短期間での一獲千金を夢見てしまうと失敗するリスクが高まります。

まとめますと「投資先を分散する」「長期スパンで投資をする」「余剰資金で投資をする」というのが、投資成果を向上させるための第一歩です。新NISA口座でも、様々な指数に連動する上場投資信託(ETF)を購入することができますし(=分散投資)、信託報酬などのコストが少額で長期投資に向いている商品も数多く取り扱っています。中長期に亘って安定的に配当を支払っている銘柄に投資すれば、配当収入を期待することができます。

先人たちも「卵は1つのカゴに盛るな」「砂(いさご)長じて巌(いわお)となる」「命金には手をつけるな」という格言を通じて、これらのことを訓えてくれています。
皆さまの投資成果が向上することを祈念いたします。

(SMBC日興証券 Kazu)