現地時間4月8日から11日にかけてラスベガスで行われた、劇場経営者やメディア向けのコンベンションの「CinemaCon 2024」を現地レポート。最終日に行われたディズニーのプレゼンテーションでは、ディズニー、ディズニー・アニメーション、ピクサー、マーベル、ルーカスフィルム、20世紀スタジオそしてサーチライトの7つのスタジオの最新作から待機作まで網羅したラインナップが発表された。

登壇したディズニーのエグゼクティブたちが力説していたのは、「劇場用大作映画の充実」。その高揚感を表現するために、いままでのディズニー作品とは馴染みの薄いFワードなどを取り入れ、「人々の目をスマートフォンから離し、家の外に出てもらうには劇場で観られる大作映画しかない」と、2023年の大ヒット映画となった『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(22)の例を出す。ディズニーのアラン・バーグマン会長は、「ディズニーは、史上最大で最もスペクタクルなイベント映画を作ることに注力しています。すべての映画が『アバター』になることはできませんが、私たちの目標は、観客を映画館に呼び込むことであり、今後の作品はまさにそれを実現するためのものです」と発言。会場を埋める劇場経営者や番組編成担当者から喝采が起きていた。

ディズニーの今夏から冬にかけてのラインナップは、『猿の惑星/キングダム』(5月10日日米同時公開)から幕を開ける。ジェリー・ブラッカイマー製作、デイジー・リドリーが英仏海峡を泳ぎ切った女性スイマーの実話を演じる『Young Woman in the Sea』(5月31日北米公開)、プレゼンテーション冒頭でもライアン・レイノルズとヒュー・ジャックマンの軽快なやりとりが公開され場内大爆笑だった『デッドプール&ウルヴァリン』(7月6日日米同時公開)、ピクサーの人気映画の続編『インサイド・ヘッド2』(8月1日公開)、そしてリドリー・スコット製作の『エイリアン:ロムルス』(9月6日公開)、サーチライト・ピクチャーズの『A Real Pain』(10月18日北米公開)、『Moana 2』(11月27日北米公開)と続く。

■2025年にかけてマーベルファン期待の年に!新規シリーズや待望の続編が控える

マーベル・スタジオのプレゼンテーションに登壇したケヴィン・ファイギは、「私は映画が大好きで、映画館で映画を観ることが大好きです。それがマーベル・スタジオの仕事であり、劇場のために映画を作り、劇場で最高の画像と最高の音響を提供できることに多大なる喜びを感じています」と挨拶。現在制作中の『Fantastic Four』(2025年7月25日北米公開予定)と『THUNDERBOLTS*』(2025年5月5日北米公開予定)の2作品をIMAXで公開することを発表。アンチヒーロー集合体である“サンダーボルツ”は、タイトルにアスタリスク(*)がついていることが重要とだけ発言している。

そして、2025年2月に北米公開を予定している「キャプテン・アメリカ」の4作目『Captain America: Brave New World』について、ファイギはこう語る。「『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』を公開してから約10年が経ちましたが、今作は多くのファンや観客の心に残り続けた作品です。それには2つの理由があると考えます。ひとつはジャンル。テンポの速い政治スリラーで、地に足の着いたアクション映画でした。そしてもうひとつは、偉大なるアンソニー・マッキー演じるサム・ウィルソンを世界に紹介したことです」。そして、サム・ウィルソンことファルコンを演じたマッキーが「まずは観てもらわないと!」と、新作のフッテージを披露した。MCU初参戦となるハリソン・フォードがサンダーボルト役を演じるシーンなどが初公開されている。さらに、R指定映画となる『デッドプール&ウルヴァリン』の紹介でファイギは何度もFワードを発し、そのたびにショーン・レヴィ監督が「これを聞いたらライアン(・レイノルズ)も大喜びだろうね!」と大ウケしていた。

■『エイリアン:ロムルス』や『哀れなるものたち』で注目高まるサーチライト最新作情報

約45年前に映画界に登場した「エイリアン」シリーズの最新作となる『エイリアン:ロムルス』からは、製作を務めるリドリー・スコットとフェデ・アルバレス監督がフッテージを紹介。9月に日本公開が控える本作への期待が募る。

サーチライト・ピクチャーズからは、今年の第96回アカデミー賞で、『哀れなるものたち』(公開中)のエマ・ストーンが主演女優賞を受賞したことを讃え、同じくヨルゴス・ランティモス監督とストーンによるタッグ第3作目『憐れみの3章』(2024年公開)の予告編を紹介。プレゼンテーション前日深夜には、5月に行われる第77回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門出品が発表されている。また、1月のサンダンス映画祭で脚本賞などを受賞したジェシー・アイゼンバーグ脚本・監督、キーラン・カルキン主演の『A Real Pain』が10月18日北米公開、エイミー・アダムス主演の『Night Bitch』も12月に北米公開になることが発表された。

■『ムファサ』『Moana 2』も!ディズニー・アニメーション最新映像公開に高まる期待

そして、ディズニー・アニメーションからは『ライオン・キング』の前日譚『ムファサ:ザ・ライオンキング(原題)』(全米公開2024年12月20日)情報が発表。監督を務めるバリー・ジェンキンスは、フロリダ州マイアミ大学で映画を学んでいた大学生の頃にマイアミのAMC(映画館)で働いていて、「1999年の夏は、『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』『マトリックス』『アイズ・ワイド・シャット』などが揃った、映画界にとって特別な夏でした。こんな思い出を(劇場主の)皆さんと共有できる日が来るとは思ってもみませんでした」と、特別なエピソードを共有した。そして、「私が作った『ムーンライト』は大きなハートのとても小さな映画でしたが『ムファサ:ザ・ライオンキング(原題)』も同様に大きなハートを描く映画であると気づきました。私の仕事は、この映画を大きなハートで、喜びと累敬の念で満たすことでした」と語り、初だし予告編を公開した。この作品の音楽を作曲した人物の名前はまだ明かせないがとてもすばらしい楽曲が上がっていることを約束するとして、プレゼンテーションを締めた。

そして現地時間4月29日、米ウォルト・ディズニー・スタジオの公式YouTubeチャンネルにて、特報映像の公開と共に本作の音楽を手掛けた人物がサプライズ発表された。その人物とは、ディズニー作品では『ミラベルと魔法だらけの家』(21)や実写版『リトル・マーメイド』(23)を手掛け、ピューリッツァー賞、グラミー賞、エミー賞、トニー賞の受賞歴を誇る稀代のヒットメーカー、リン=マニュエル・ミランダ。ミランダは「『ライオン・キング』には、偉大なソングライターたちのすばらしい音楽的遺産が残されています。その一員になれたことに恐縮しつつも、誇りに思っています。バリー・ジェンキンスと協力してムファサの物語に命を吹き込むのはとても楽しいことであり、観客がこの映画を劇場で体験できるのが待ちきれません」とコメントを発表。

特報では若きムファサ(アーロン・ピエール)と本来の名前はタカ、のちのスカー(ケルヴィン・ハリソン・Jr.)に加え、『ライオン・キング』(19)から同声優キャストが続投するティモン(ビリー・アイクナー)、プンバァ(セス・ローゲン)らの姿も。前作からはほかに、シンバ(ドナルド・グローバー)、ナラ(ビヨンセ・ノウルズ)、ラフィキ(ジョン・カニー)も登場。新キャストとして、シンバとナラの子ども、キアラ役をビヨンセの娘であるブルー・アイビー・カーター、さらに、本作のヴィランであるライオンのキロス役をマッツ・ミケルセン、タカの母がエシェ役をタンディ・ニュートン、タカの父・オバシ役をレニー・ジェームズ務めることが発表されている。

4日間にわたる映画業界のコンベンション、シネマコンの最後を締めくくるディズニーのスタジオプレゼンテーションは、およそ75分の映像を見せる大盤振る舞いだった。スタジオの方向性を決めるエグゼクティブが冒頭で述べたように、2024年からのディズニーは“劇場用大作映画”にしっかりと舵を切る意思表明になっていた。

取材・文/平井伊都子