現地時間5月25日に第77回カンヌ国際映画祭の授賞式が行われ、コンペティション部門に出品されていたヨルゴス・ランティモス監督の最新作『憐れみの3章』のジェシー・プレモンスが男優賞に輝いた。

『女王陛下のお気に入り』(18)と『哀れなるものたち』(23)に続き、ランティモス監督がエマ・ストーンとサーチライト・ピクチャーズとタッグを組んだ本作。選択肢を奪われ、自分の人生を取り戻そうと格闘する男と、海で失踪し帰還するも別人のようになった妻を恐れる警官、そして卓越した教祖になると定められた特別な人物を懸命に探す女という3つの物語から構成。それぞれの物語で同じ俳優が異なる設定の人物を演じており、プレモンスはいずれの物語でも最重要となる人物を快演。

現在36歳のプレモンスは子役としてキャリアを積んだ後、『ザ・マスター』(12)や「ブレイキング・バット」で注目を集め、主演作『もう終わりにしよう。』(Netflixにて配信中)でブレイク。続く『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(Netflixにて配信中)でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(23)では捜査官役を好演するなど、近年は賞レースで注目を集める作品への出演が相次いでいる。なお、三大映画祭での戴冠は今回が初めてのこと。

また今回で4度目のカンヌ国際映画祭出品となったランティモス監督作品は、『籠の中の乙女』(09)が「ある視点」部門のある視点賞を受賞。その後『ロブスター』(15)がコンペティション部門の審査員賞を受賞し、『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(17)が同部門の脚本賞を受賞。今回男優賞を獲得したことで、4作続けて主要賞に輝く快挙を達成した。

そして今回の吉報に合わせ、本作の日本公開日が9月27日(金)に決定。来年のアカデミー賞でも有力候補に名を連ねることになるであろう本作。是非とも劇場で、ランティモス監督が新たに仕掛ける独創的世界を目撃してほしい。

文/久保田 和馬