北の夜空に新星が現れようとしている。数日以内に現れるかもしれないし、数カ月かかるかもしれない。天文学者たちは、その星が輝くのを80年近く待ち続けてきたが、いつ現れるのかははっきりしていない。しかし、いったんその星が現れれば、1週間は肉眼でも見えるほど明るく輝くだろう。

 その後、天空のパノラマに現れたのと同じくらい早く、その星は消えていく。

 この派手な出現の理由は、「かんむり座T星」の「再帰新星」という珍しい現象にある。この星は馬蹄形の星座であるかんむり座に位置しており、地球から約3000光年の距離にある。

 よく知られている超新星は恒星の寿命が尽きて爆発したときに引き起こされるが、その名の通り、再帰新星は頻繁に爆発する。かんむり座T星の場合、前回の爆発は1946年に起こった。このような再帰新星は、銀河系では10個しか知られていない。

何度も繰り返し爆発する原因は?

 かんむり座T星の光は、単一の宇宙天体が爆発した結果ではなく、互いの周りを回る2つの死につつある星のダンスによるものだ。

 2つのうち大きい方の「赤色巨星」は、太陽系の太陽とほぼ同じ質量を持ち、水素やヘリウムなどの物質を失いつつある。赤色巨星の放出物の一部は、伴星である「白色矮星」に落ちていく。白色矮星は地球とほぼ同じ大きさであるにもかかわらず、太陽よりも約40%以上も多くの物質を含んでいるため、非常に高密度だ。

 白色矮星が赤色巨星の廃棄物を取り込むにつれ、その温度はどんどん上昇し、さらに高密度になる。やがて、80年ほどの周期で限界点に達し、一連の強力な核融合反応を引き起こして爆発するのだ。

「私たちは世界中でかんむり座T星を追跡しているのですが、この星は面白いことをしています」と、米アリゾナ州立大学の教授で、この連星系を詳しく研究してきたサムナー・スターフィールド氏は言う。

「数年前から明るくなり、今は少し暗くなっています。1946年に爆発する直前とほぼ同じようなことが起きているように思えるので、私たちはがぜん非常に関心を持つようになりました」

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