7月に開幕するパリオリンピックの新競技として注目されている「ブレイキン」。
アメリカ・ニューヨーク発祥のダンス「ブレイキン」の魅力を伝えようと活動する岩永朝太郎さんを取材しました。

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立った状態でステップを踏む「トップロック」に

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しゃがんで地面に手をつき足技を繰り広げる「フットワーク」

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体の様々な部分で回転する「パワームーブ」

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そして、動きを止める「フリーズ」

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UNO−NGSK代表 岩永朝太郎さん(32):
「この4つを自分で好きなように、“好きなよう”に合体させるのがブレイクダンスです。“好きなように”っていうのがポイントね」

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岩永朝太郎さんは、3年前に、長崎県内では初となるブレイキン専門のダンススタジオ「UNOーNGSK」を開き、諫早市と長崎市で指導しています。
また、県ダンススポーツ連盟理事・ブレイクダンス部長も務めブレイキンの普及活動もしています。

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DJがかけるヒップホップ音楽に合わせ、相手と交互に、即興で踊りを見せ合って競う「対戦型」のダンス「ブレイキン」。
岩永さんは、九州で行われたブレイキンのダンスバトルで、2度《ベスト8》に輝きました。しかし、勝ち負け以上に大事にしているのが「個性」です。

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岩永さん:
「その人なりの個性だったり、気持ちだったりをのせて踊ってるダンスに関しては、上手い下手関係なくすごく良いブレイクダンスをしてるなって感じますね」

「自分は普通ではない」思い悩む日々

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諫早市で生まれ育った岩永さん。両親ともに脳性まひがあり、足が不自由で車椅子生活だったことから、家事など身の周りのできることは幼い頃から当たり前のこととしてやってきました。

岩永さん:
「自分のことは割かし全部自分でやってたような記憶が僕はあるので」

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しかし、思春期になると、「自分は普通ではない」と悩むようになりました。

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岩永さん:
「(中学でバスケの)部活始めたんですね。洗濯物がすぐたまるんですけど、洗濯物も間に合わないし…『とりあえず洗っとけばいいかな』ぐらいのつもりでやって生乾きのまま着て行って『臭い』っていう感じだったんですよね。
(周りから)『臭う』とかですね、言われたことがあったりとか。そういった小さなことが重なって“自分が普通じゃない”っていうので自信が持てなくなって。なかなか、うまく抜け出せなかったですね。そこは」

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中学1年の夏休み明けから不登校に。その後、友人のお陰で徐々に登校できるようになったものの、自分に自信が持てないままでした。

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ブレイキンとの出会いは高校二年の時。友人に誘われたのがきっかけでした。

ブレイキンの魅力を子どもたちに

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岩永さん:
「まさにここ(諫早市体育館)で自販機の灯りを頼りに。(出入り口のガラスに)ちょうど体が映るんで、こうやって自分の身体を見ながら踊ってました。できないなりにも楽しかったんですよね。気がついたら時間を忘れてやってるって感じでしたね」

小中学校の同級生・宮崎浩二さん。岩永さんをブレイキンに誘った友人です。
※宮崎さんの「崎」の漢字は正しくは「﨑=たつさき」

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宮崎浩二さん:
「(ブレイキンを始める前とは)もう全然別人ですよね。(ダンスを)切磋琢磨していくうちに、すごく明るくなっていったり、結構コミニティが拡がっていって。彼が率先して長崎のダンスシーンを引っ張ってるんで、僕は微力ながらですけど、お手伝いできたらなと」
岩永さん:「心の支えになります、うん」

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パリオリンピックまで3か月を切った5月6日、長崎県大村市でブレイキンの無料体験会を開きました。子どもと保護者、約20人が参加しました。

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岩永さん:
「ブレイクダンスってどんなダンスか見たことある人?」
参加者の子ども:「ある!」
岩永さん:「お!いーねー、いーねー。そう《頭でくるくるするやつ》だと思うね。ブレイクダンスって実は色んな技があるので、まずみんなに見てもらいたいと思います」

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オリンピック種目になったとはいえ、まだまだとっつきにくいイメージを持たれることも多い「ブレイキン」。気軽に触れてもらえるよう基本的なリズムや動きを親子で楽しく体験できるメニューを考えました。

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子ども「回るところが楽しかったです」

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父親「ゴールデンウイーク明けから(ブレイキン)習わせます」

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子ども「楽しそうだから」

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岩永さん:
「ダンスを始めてもらう。どうこうはとりあえず置いておいて。ブレイキン=ブレイクダンス、とりあえずやってみて、なんとなく見るところがわかったら、オリンピック見るの楽しいと思うんで」

《人との違い》《個性》を認め合う

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パリオリンピックが近づくにつれ関心も高まっているのか、3年前のオープン当初20人ほどだったダンススタジオの生徒数は、現在、約70人に増えました。

岩永さんの指導:
「そう!いいじゃん!そうそうそうそう。今の感じをもう一回。そうそうそうそう!」

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子ども:「ヘッドスピンって頭で回るやつ、あれ気持ちいいし、なんか嬉しい」

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子ども:「世界で優勝したい」

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子ども:「(先生は)負けたけど“ここは良かったよ”とか(言ってくれる)頑張りたくなる」

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岩永さん指導:「じゃ、正解のかたちを覚えるね」

目指すのは、生徒それぞれが《人との違い》を《個性》と捉え、踊りの中で存分に発揮し、それを認め合える“ブレイキン”です。

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岩永さん:
「これが正解っていうのを教えるんですけど…でも、その子たちそれぞれから出てきた個性みたいなものを間違いとして指摘するんではなくて、その動きもいいよねーってことで認めてあげて、いつか(その個性も)出してほしい。《みんな違ってみんないい》っていうのが一目でわかるようになっていったらいいなと思います」

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『人と違うことはコンプレックスではなく魅力にできる』自身の経験とブレイキンを通じて岩永さんが伝えたいメッセージです。