さまざまな事情を抱えた人たちが利用するラブホテル。一般的には、ドキドキ、ワクワクしながら、ときにはヒソヒソと向かう場所だ。
 実家がラブホ街にあり、学生時代はラブホでアルバイトをしていた前田裕子さん(仮名・20代)。今回は、都会のラブホを見て驚いたこと、実家がラブホであることが原因で彼と別れた友人のエピソードを教えてくれた。

◆「建物ちっさ」「駐車場ないの?」都会のラブホを見て思ったこと

 ラブホが身近だった前田さんだが、ある日、自宅付近のラブホ街しか知らないことに気づいた。旅行先では、思わずキョロキョロ、フラフラとラブホ街に出没する怪しい旅行者になるそうだ。

「都会のラブホが気になるんですよね。地元が田舎なので、『やっぱり都会のラブホは違うな』と……」

 実際に歩いてみた都会のラブホは、“駅近で徒歩3分”などというアピール文が目立つ。それだけではなく、駅近なのにメイン通りから少し外れたところにひしめきあっていることが特徴だ、と前田さんは話す。

 ほかにも「建物ちっさ……」「駐車場はないの?」と、田舎のラブホとの違いに驚きを隠せないようだ。

「駅から近いので、『終電なくなったし、何もしないから休んで行こう!』という誘い文句が通用する理由が、何となくわかりました。実家のあるラブホ街は駅から遠く、むしろ“高速出口から車で2分”と書かれています」

 土地が安いためか建物は大きく、どのラブホにも大きな駐車場があるという。駐車場があることは当たり前の環境だったのだ。

◆宿泊プランのないラブホは田舎ではあり得ない

 そして、前田さんが最も驚いたことは……。

「宿泊プランのないラブホがあったんですよ。終日3時間ほどの休憩だけというような。きっと近くに派遣型のお姉さんのお店があると察しはつきますが、田舎のラブホは19時間とか普通に滞在できますし」

 また、ホテル街のネオンについても違和感があったようで……。

「私の近所のマダムは、ラブホ街は明るいから夜のウォーキングも安全!と言うくらい、ネオンがゴテゴテなんですよね。でも都会は、一見ラブホには見えないシックな建物や、看板すら出ていないラブホもありました」

 さすがに、夜のラブホ街を1人で徘徊することは迷惑になると控えたそうだが、「夜は暗そうだな」と直感したとのこと。

「田舎よりも都会の人のほうが、ラブホをタブー視してるんですかね。タブー視というよりもコソコソ感を楽しんでいるのかも……」

 一方で、前田さんの暮らした田舎のラブホ街では、

「これから私たち、ラブホに入りますけど」
「ええ、車でラブホに来ましたよ」

 みたいに堂々としている感じだったそう。

 そして、最近のラブホ探索で発見した某3大都市の特徴を教えてくれた。

「A都市は、住宅地に点在で坂道ばっかり」
「B都市は、駐車場が共有、プール式でビックリ」
「C都市は、駅近でビジネスホテルの間にあって驚愕」

 前田さんが旅行先でラブホ街をフラフラするという趣味は、これからも続きそうだ。

◆女子大生時代、実家がラブホであることを内緒に

寄り添う男女 実家でラブホを経営する、前田さんと幼馴染の女性のAさん。彼女が彼氏と別れることになったときの衝撃的なエピソードを教えてくれた。

 Aさんは当時、栄養士を目指しており、料理も家事も得意だったそうで、前田さんはそんな彼女がいったいなぜ? と思っていたそうだ。

「相談されたときは、Aちゃんは彼と初めての旅行に行ったばかりでした。ですので、『何があったの?』と驚きました」

 原因は、旅行先でラブホに宿泊したことがきっかけだったそうだ。

「Aちゃんは『お泊りが失敗だったみたい』『私からしたら、自宅以外の初ラブホだからドキドキだったんだよね』と言っていました」

 今なら平気で「ウチ、ラブホ経営してます」と言うAさんだが、当時は女子大生。「(自宅以外の)ラブホって初めて!」と隠していた。そして、彼もラブホでの宿泊が初めてだったという。

◆ラブホに詳しいことを彼氏に隠しきれなかった

ラグジュアリーなホテルのバスルーム「Aちゃんは、『わー、お風呂広い』『ラブホってこんな風になってるんだ』と初めて感を出しながらはしゃいでいたそうです。そして、夕飯は街の散策を兼ねて外に出ることにしたらしく……。ラブラブしながら帰宅したそうですが、彼が外出することをフロントに伝えていなかったようなんです」

「あ? 開かない」と扉をガチャガチャとする彼に、「フロントに連絡しないと開けてもらえないタイプみたい」とAさんは思わず発言してしまったのだ。そのときの彼は、「あ、そうなの?」と謎が解けて安堵した様子だったのだが……。

「旅行の思い出話をしたあと、冷静になった彼は、ラブホ事情に詳しかったことが気になっていたと、Aちゃんに打ち明けました。内緒にしていた“ラブホ経営者の娘”ではなく、“ラブホに詳しく遊びまわっている娘”と、彼の思考が完全に結びついていたみたいです」

 彼に対して猫を被り、別れることになったAさんは、「隠していた私も悪いけどさ!」と怒りを隠せない様子だったと、前田さんは振り返る。結局、Aさんは彼に実家がラブホであることは伝えなかったという。

「自宅がラブホ経営と言うと、驚くぐらい興味をもたれるか、ドン引きされるかの2択しかない、とAちゃんは教えてくれました」

 ちなみに学生時代の前田さんは、彼に引かれることを防ぐためにビジネスホテルに泊まっていた。最近は、スーパーホテルが好きで、実家がラブホ街という事実をネタにしているとか。

<取材・文/資産もとお>

―[ラブホの珍エピソード]―