このほど亡くなった中尾彬さん(享年81)はバラエティーに情報番組、芸能イベントに引っ張りだこであった。

 おしどり夫婦として、愛妻の池波志乃(69)とペアでの出演も快諾。期待通りか、それ以上のコメントで盛り上げてくれたからだろう。

 夫婦間のウソを描いた映画「スイートリトルライズ」のトークショー試写会があり、2010年に揃って登壇したときのこと。

 中尾さんはトークの冒頭、33年の結婚生活で「(自分以外の相手と)恋に落ちたことないだろう」と池波に向けた。

「ええ、多分」と即答があると、こう言ってのけた。「これがウソなんだよ」と。池波も苦笑いで、こう語った。

「結婚したからといって、幻想を抱かないことが大切。一生、他人と付き合うことですからね」

 長く生活を共にしていると、相手への遠慮や気配りも忘れ、ルーズにもなるものだが、「33年間、寝顔を見せたことはない」と池波はこのとき言い、毎朝必ず中尾さんよりも早く起きて、身だしなみを整えていることを明らかにしていた。

 そんな節度ある池波を中尾さんは生涯、大切にしていたようだ。

 芸能リポーターの小柳美江さんがこう振り返る。

「志乃さんとご一緒にイベントなどに出演されたとき、それってオノロケですよねと突っ込みたくなるような場面がいくつもありました。あくまで遠回しな言い方で、ストレートではないのですけど、本当に大好きなんだなあと伝わってきたものです」

■「オレはカミさん以外いらない」と断言

 夜の報道番組の生放送にコメンテーターとして出演したときは、こんなエピソードも。

「番組のエンディングで、中尾さんはカメラに向かって、お寿司屋さんの店名を挙げて『このあと、そこで待っているから』って。スタッフ、出演者があぜんとする中、番組が終わってしまったのです。だって、それは志乃さんにだけ送られたメッセージ、テレビ電話にしちゃったのですから」(小柳さん)

 中尾さんが池波との共著「終活夫婦」(講談社)では毎晩、池波の料理を肴にふたりで晩酌を楽しみ、2時間なんてあっという間に過ぎていくとしていた。

 池波が「テレビを見ながら食事をすることはまずないわね」と言うと、中尾さんはこう続けている。

「一切ない。だって、テレビを見ていたらせっかくの料理の味がわからなくなるじゃないか」

 そして「オレはカミさん以外いらない」と断言している。

「死んでいくというときに必要なものなんて、なんにもない。カミさんがそばにいてくれてたら、もうそれでいいんだ」

 との考えをメディア取材でも語っていた。

 葬儀で喪主を務めた池波はこう挨拶したそうだ。

「あまりに急で、変わらない顔で逝ってしまったので、まだ志乃〜と呼ばれそうな気がします。かないますならば、中尾彬らしいね〜と笑って送ってあげてくだされば幸いです」

 このとき、天国に旅立った中尾さんがにんまりと、あの笑顔で池波を見守っていたであろう。