先週末のゴルフメジャートーナメント「全米プロ選手権」は、東京オリンピック金メダリストのザンダー・シャウフェレが、最終日の最終ホールをバーディーで上がってメジャー初優勝。松山英樹は発熱もあって絶不調だったが、初出場の久常涼は2桁アンダーまで伸ばして18位と健闘した。ところが、日本では地上波テレビの放送はなく、「ライブで見たかったなあ」というゴルフファンは多いだろう。

 かつてはゴルフの海外トーナメントは人気で、テレビ局は放送権を奪い合い、朝まで中継したものだった。しかし、ここ数年は放送権料の高騰や視聴率低下で次々に撤退、4大メジャーでさえ、今年はTBS系の「マスターズ」だけになってしまった。

 そんな地上波局を尻目に、この「全米プロ」をはじめ、6月第3週の「全米オープン」、5月31日からの「全米女子オープン」など、男女のメジャー大会を予選から優勝が決まるまで生中継する果敢なテレビ局がある。BS松竹東急(260ch)だ。「全米プロ」は丸山茂樹らの解説で朝4時から8時まで生中継(最終日は延長)、夕方には再放送もあった。

 BS松竹東急は、社名の通り、松竹と東急の出資で2022年に開局、映画・ドラマや買い物情報が主要コンテンツだが、トーナメント以外のゴルフ番組にも力を入れている。ベテランと若手の女子プロペアとコースを熟知したメンバーペア(アマチュア)が競う「ゴルフW」、プロゴルファーで解説者のタケ小山と女子プロ2人の9ホールマッチプレーとレッスンの「タケ式!ゴルフ道場」も始まった。

 このBS松竹東急と同じ時に開局した「BSJapanext」(263ch)も、ゴルフ番組がてんこ盛り。

 こちらは通販でおなじみのジャパネットたかた系で、ゴルフバラエティー、レッスン、ゴルフ談議などの番組が毎晩9時からあり、早朝にはPGAツアーの決勝ラウンドやハイライトを流す。

 トーナメントは有料のネット配信やCSでも見ることができるが、この2局は無料だ。どんなソロバンをはじいているのだろう。

「メジャー大会の日本でのテレビ放送権料は5億円前後と高額で、欧米の主催者側もこれを失うのは大きい。そこで、従来の契約とは違う条件で売り込みをかけています。たとえば、長期契約ではなく単年度契約にしたり、為替変動に対応した放送権料設定など、実質的な値引きをにおわせたりもします。後発のBS局でも手が届くようになってきたというわけで、知名度や媒体イメージをアップするための投資としては悪くないはずです。松山英樹やタイガー・ウッズが優勝争いに絡んでくれたら、リアルタイム視聴率も上がるし、CMも入るから十分に元は取れます」(大手広告代理店スポーツ担当営業マン)

 テレビ朝日が撤退した7月の「全英オープン」も、BS松竹東急で中継してくれないかなあ。

(コラムニスト・海原かみな)