石原さとみ(37)が「女優として、これが自分の代表作です! と胸を張って言える作品にしたい」と全力で臨んだ主演映画「ミッシング」が思いのほか伸び悩んでいる。娘が失踪し、情報の荒波に巻き込まれ翻弄される母親が石原の役柄だが、公開前から映画の評価は上々で、「今年の映画賞総なめ間違いなし!」と映画関係者の間で囁かれていた。

 ところが、5月17日に全国257館の劇場で公開された「ミッシング」は、公開から3日間の観客動員数は約7万4000人。興行収入は辛うじて大台を超える約1億420万円で、週末動員ランキングは第7位だった。

 草彅剛(49)と小泉今日子(58)の29年ぶりとなる共演が話題になった「碁盤斬り」が同じタイミングで公開され、「今どき、時代劇映画で客を呼べるのか……」と懸念されたものの、「ミッシング」を観客動員数で約1万3000人、興収で約2000万円上回る勢い。筆者は、よほど観客動員数が劇的に変化しない限り、「ミッシング」の最終興収は4億円台後半にとどまると試算している。これは石原の主演映画で最高興収約13.5億円を記録した「貞子3D」(2012年)の3分の1程度で終わるかもしれないことを意味する。つまり、このままだと、石原の代表作は「貞子3D」でほぼ確定ということになる。

「ミッシング」は石原が「このままじゃいけない。変わりたい。吉田恵輔監督なら自分を壊してくれる」と“女優・石原さとみ”を再構築しようと臨んだ意欲作だったが、残念ながら既存イメージから脱却ができなかったということだろう。

 劇場を後にする観客に話を聞いてみると、「生々しい演技を見て、涙が止まらなかった」「すっぴんで、髪もボサボサのまま泣き叫ぶ姿に引き込まれました」と石原の演技を絶賛する声も聞こえたが、興収が伸び悩んでいるのはなぜなのか。

「石原本人が求める“これからの石原さとみ”像と、ファンが期待するイメージ像のギャップが浮き彫りになったということでしょう。今年12月に38歳になる石原は、アイドル女優からの脱皮を意識して初めて“汚れ役”に挑んだわけですがファンが期待するのはやはり“いつも笑顔の、いくつになっても可愛いママ”という存在感です。乾燥した荒れ放題の唇や、弟の髪を引っ張って罵倒する石原の姿を見るために劇場には足を運べない……ということなのかもしれません」(芸能プロダクション関係者)

 また、石原の「ミッシング」の演技について《彼女が壊れれば壊れるほど、全く正反対の幸せそうな私生活が見えてきてしまって。報道されているような一流企業のエリートサラリーマンとお子さんとの幸せな生活が浮かんでしまい、どこか冷めてしまう》という声もあった。20年に石原が結婚した外資系証券会社に勤める夫は、長身イケメンで年収5000万円とも報じられた。石原は22年に第1子も生まれており、今、幸せ真っただ中なのだ。一方、石原が検事役を演じる連続ドラマ「Destiny」(テレビ朝日系)の視聴率は好調を維持しており、“司法エリート”は視聴者にとって、さほど違和感のない役柄なのだろう。

「ミッシング」の吉田監督は、7年前に出演を直談判してきた石原を、「苦手なんです。華がありすぎる」と1度は断ったという。それでも新しい脚本を書き「こちらの世界に引きずり込めないかと考えた。ある種ギャンブルでした」と出演を決めた経緯を明かしている。年齢を重ねることは絶対に回避できない定めであるが、理想と現実のギャップにもがきながら、石原は今後女優としてどう進化していくのだろうか。

(芋澤貞雄/芸能ジャーナリスト)