【シニアのためのマネー講座】#92

「3万円払ってください。24時間でAI(人工知能)が1億円にします」

 こんなバカな話を信じる人がいるのだろうか。でも、「3万円くらいなら捨てたつもりで賭けてみるか」──そう気軽に考える人はいるだろう。

 でも、冷静になってほしい。そんなことができるのなら、ネット広告なんて出さなくても、自分たちで増やせばいい。わざわざ募集なんかかけなくても済むはずだ。

 なんて、思っていたら、「もうすぐ死にますので、この世の中の裏話を暴露します。儲かる株も教えます」。

 そんな広告も出てきた。当の本人のまったく知らないところで──。AIの自動生成か何か分からないが、言葉巧みに投資を誘っている。こんな感じで被害者が続出。広告に使われた有名人たちは、政府に対策を訴え、広告を載せているプラットフォーム会社を訴えている。そして被害者たちも声を上げ始めた。

「SNS型投資詐欺」

 昨年の被害額は300億円に上るという。水面下での被害も多く、その金額はさらに膨れあがるだろう。森永卓郎さんに前沢さん、ホリエモンに厚切りジェイソンまで。業界人を巻き込む大騒動となっている。騙される方も騙される方。しかし、騙す方はもっと悪い。「あんなイカサマっぽい映像によく騙されるな」と思うが、当の本人たちは完全に信じ切っている。

 有名人とLINEでつながり、アシスタントとは毎日のやりとり。グループLINEで少しでも疑おうものなら、周りから誹謗中傷の嵐。ちょっとした「宗教」だ。洗脳されたって仕方がない。

 世界ではAI技術が向上し、映像だけでは真偽の区別がつかなくなっている。特にシニアの人たちは、この手の最新技術に弱く、ついていけない部分もあるだろう。

 政府が背中を後押しする空前の投資ブーム。しかし、その裏では「イカガワシイ人たち」が跋扈し、大金をむさぼっている。何とかしなければならない。

■「触らぬ神にたたりなし」

 なので、シニアの皆さんは、そんなに欲をかかずに、「触らぬ神にたたりなし」と、割り切っていきましょう。投資をしなければ損はしない。

「ん? インフレが怖い?」

 大丈夫です。そんなことになる前に死んでしまいます。インフレと寿命の競争なのです。それぐらいの「賭け」はしてもいいでしょう。

(黒岩泰/株式アナリスト)