「『積まんことには話にならん』ということやね。8000万円を超える数字を出さないと。(局長には)諮らんでええって。この期に及んでそんなこと言っている時間ないやろ。何しに来たん?みんなそんな暇ちゃうで。おまえ、ええ加減にせいよ」

 昨年1月、大阪市の淀川で死んだマッコウクジラ「淀ちゃん」の死骸処理費を巡って、今、市役所が大騒ぎになっている。担当外の大阪市港湾局の経営改革課長が担当の海務課長を恫喝し、処理費用の「水増し」を要求していたことが明らかになったのだ。背景にあるのは、市港湾局と海運業者の癒着だった。

 昨年1月17日、松井一郎市長(当時)が「海からきたクジラ君ですから、死んだら海へ返してあげたい」と発言。2日後の19日、クジラは和歌山県の紀伊水道沖に沈められた。

 処理費の交渉は処理後の昨年3月27日に行われた。市側からは海務課長のほか、本来、担当ではない経営改革課長が出席。海運業者の担当者は元市職員で、経営改革課長とは旧知の仲だった。市港湾局が当初、試算していた処理費は3774万円。一方、海運業者は市側に8625万円の見積もりを提示済みだった。

 交渉のテーブルで業者側は「一番(中身がわからない)ブラックボックスにできるのは清掃なので、うまく8000万(円)台へもっていったらいいんちゃうの」と提案。これに対し、海務課長が「(清掃することは)聞いていない。上司に諮らないと」と伝えたところ、経営改革課長の口から冒頭の恫喝発言が飛び出し、増額を強く迫った。結局、経営改革課長が言った通りの8019万円で随意契約が決まった。

■2月に迷い込んだクジラは1500万円前後で処理

「港湾局職員と海運業者の癒着が次々明らかになっています。当時の人事・港湾再編担当課長が死骸処理後の1月下旬、業者を訪問し、日本酒を贈っていた。交渉にあたった経営改革課長も価格交渉期間中、飲み物とつまみを持参して業者を訪れ、内規で禁止されている会食をしています。港湾局の別の部署の職員も、事前に同社に市の試算額を伝えていた」(市関係者)

 今年2月には、再び大阪湾に迷い込んだマッコウクジラが死んだ。死骸は堺泉北港内の産業廃棄物処理場に埋められ、2年後をメドに骨を取り出し、「大阪市立自然史博物館」に提供される。埋めるまでの処理費は、前回の5分の1以下の1500万円前後となる見通しだ。

 前回も市立自然史博物館から「骨格標本にしたい」と申し出があったが、松井市長は「具体的に標本を引き取るという申し出はありませんでした」と独断で海底沈下を決定した。

 退任間近の市長の「鶴の一声」に乗じ、部下の経営改革課長が元同僚の市OBと結託してやりたい放題。松井氏が知事、市長として12年間、大阪でやってきた「身を切る改革」とは何だったのか。