【「表と裏」の法律知識】#235

 離婚後に父と母の双方が子どもの親権を持つ「共同親権」導入を柱とする改正民法が今月17日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立しました。

 現在の民法では、離婚すると父母の一方しか親権者になれない状況でしたが、改正法では、父母が協議、または裁判所の判断で、双方が親権者となるか、一方のみとするか決められるようになります。改正民法は、2026年までに施行する予定とのことです。

 従前から、離婚後の共同親権については、DV被害者との関係や、夫婦間の不和が離婚原因として多い日本において離婚後の親権の共同行使が適切にできるのか、さまざまな問題が指摘されていました。

 この点につき改正民法では、裁判所が共同親権にすべきかを判断する際において、「父または母が子の心身に害悪を及ぼす恐れがある」場合や、「父母が共同して親権行使が困難である」場合には、共同親権と判断することが許されず、単独親権にするとの判断を下さなければならない旨の規定がされる予定であり、上記の問題点の解決を意識されています。

 もっとも、この要件に該当するかを最終的に判断するのは、事件を担当する裁判官であり、改正民法が適切に運用されるには、裁判官が適切な判断を下すことが前提となります。

 特に「共同して親権を行使することが困難である」かの判断については、裁判所での先例もなく、裁判所が当初から適切な判断をすることができるのかは疑問が残るところです。

 また改正民法では、共同親権とするかは父母の協議で決めることもできるとしています。

 DVやモラハラによって父母の一方が他方の言いなりになってしまうような関係性である場合には、半ば強制的に、共同親権を定めてしまうことも可能であり、離婚したにもかかわらず、DVやモラハラから逃れられない事案が増えることも考えられます。

 このように、共同親権にはさまざまな懸念点がある状況だけに、その運用方法については動向を注視していくことが不可欠だろうと思います。

(髙橋裕樹/弁護士)