<ヤクルト2−0広島>◇15日◇松山

「心は熱く、頭は冷静に」。好きな言葉を胸に、ヤクルトのドラフト2位ルーキー松本健吾投手(25)が球史に名を刻んだ。プロ野球史上初となる初登板を無四球&2桁奪三振&完封勝利。東海大菅生3年時の17年にえひめ国体で登板して以来の坊っちゃんスタジアム。父達夫さん、母明子さんが見つめる前での衝撃デビュー。「全くイメージしていなかったというか。本当に最初から全力でいって、後は先輩方につなぐと思って投げていた。それが気付いたら9回になっていた」と、新人らしからぬクールなマウンドだった。

亜大4年時に指名漏れ。卒業後に人生初めてアルバイトを経験。東京・立川の飲食店「ベースボール」で、ちょうネクタイを締め、ウエーターとして従事。「大変というより、楽しかったです。『人前でしゃべるの覚えなさい』『お客さんの前で話しなさい』と教えてもらいました。お金を稼ぐ厳しさを学びました」。握りしめた人生初の給料は忘れない。トヨタ自動車では工場勤務。自動車の組み立て部に所属した。時折、現場に入り、車づくりも経験。そしてようやく、野球1本で給料をもらう立場となった。

グラブには「ナマステ」の刺しゅう。社会人時代に、はまっていたヨガのあいさつの言葉を左手に躍動した右腕。3回まで散発3安打。4回以降はパーフェクト。「100点満点かなと思います」。打席では先輩たちからの勧めで「マツケンサンバ」を流すルーキーが、松山の地でお祭り男となった。【栗田尚樹】

▽広島小園(松本健の印象に)「低めに投げきって、手を出してしまうところに投げられた」

▽広島朝山打撃コーチ(松本健の印象に)「途中から変化球が多くなるのは分かっていたので、変化球狙いの指示も出していたんですけど、いいゾーンに投げられて見極めができなかったのか。対策を絞っていきたい」