ゴリラになって日本代表を引っ張る−。パリ五輪の競泳100メートルバタフライ日本代表で、競泳陣の主将を務める水沼尚輝(27=新潟医療福祉大職員)の激励会が17日、同大で行われた。21年東京大会に続く2大会連続の五輪出場。前大会は準決勝止まりだっただけにパリでは決勝進出と、自身の日本記録(50秒81)更新を狙う。チームメートからは「ゴリラ兄さん」と慕われるほどのマッチョな肉体を誇る。水中ではたけだけしいゴリラになってチームに勢いをつける。

迷いはなかった。水沼はパリ五輪の目標を力強く誓った。「一番は決勝進出。決勝ではワクワクする感情が生まれる。ベストを出せると思う」。100メートルバタフライで50秒81の日本記録を持つ男の新記録樹立宣言。210席ある大講義室が教職員、学生の立ち見でふくれ上がる盛況の中、パリでの快泳を約束した。

日本代表の主将にも指名された。「競泳チーム全体が同じ空気感で戦えるように包み込みたい」と責任感を口にする。マッチョな肉体から代表メンバーの本多灯(22=イトマン東進)らには「ゴリラ兄さん」と慕われている。「ゴリラは人間の約6倍のパワーがある。普段はやさしいゴリラでも、レースになったら本気モードのゴリラになる」。新記録宣言に継ぐ、ゴリラ宣言だった。

「人間は不可能を可能にする動物」。大学入学当時は日本代表さえ頭になかったが、2大会連続の五輪出場。22年の世界選手権(ブダペスト)では銀メダルを獲得し、五輪を含む世界大会で同種目の日本勢初の表彰台に上がった。東京五輪は準決勝止まりだっただけに、その悔しさを晴らすのがパリだ。

歓喜の世界選手権後の22年10月にぎっくり腰を発症し、回復後は「思い描いている泳ぎと実際の泳ぎがバラバラ」という苦境も経験した。そんな不調をフォーム変更で打開。上下動が小さく、水の抵抗が少ない泳ぎに変えてパリ切符を獲得した。「代表選考会の新フォームは5〜6割の完成度。パリでは8割くらいに上げたい」。27歳の「ゴリラ兄さん」には伸びしろがたっぷりある。【涌井幹雄】

◆水沼尚輝(みずぬま・なおき)1996年(平8)12月13日生まれ。栃木県真岡市出身。作新学院−新潟医療福祉大。卒業後は同大職員。18年の日本学生選手権100メートルバタフライ優勝。19年の日本選手権で同種目優勝。21年東京五輪は準決勝敗退。22年世界選手権銀メダル。23年世界選手権は予選敗退。181センチ、81キロ。血液型B。