[県歯科医師会コラム・歯の長寿学](348)

 オーラルフレイルとはかんだり、飲み込んだり、話したりするための口の機能が衰えることで、早期の重要な老化のサインとされています。口の機能が落ちたまま、このままかめない、飲み込めないという状態が続くとどうなってしまうでしょうか?

 食べることが楽しくないと人との交流も少なくなり、外出しなくなってしまいます。食事ができないと栄養が十分に取れず、体が弱り、筋肉が減っていきます。筋肉が落ちて日常的な動作が苦手になったり、歩いたり、階段を上ったりするのがつらくなると、外出することも減ってしまい、負のスパイラルに陥ってしまいます。

 「口の機能が弱って食事ができない」ということは、「全身が弱って日常的な活動ができない」ことにつながるのです。

 さまざまな疫学調査で、歯が多い人ほど認知症になりにくい、医療費が少ないということが分かってきています。自分の歯を喪失していても、インプラントや入れ歯などで口の機能を回復できていれば同じです。

 うまくかめない、飲み込めない、むせる、食べるのに時間がかかる、食べこぼしがある、歯磨きやうがいがうまくできない、口が乾いている、滑舌が悪いなどの症状がある方は、お気軽にかかりつけ歯科医師にご相談ください。健康保険で歯や歯茎の状態、かむ力、舌の強さなどの検査をして、口の機能に問題がないかを調べることができます。病気になる前に予防できるのがベストですが、口の機能が落ちていたとしても適切な治療やトレーニングで症状を改善させることは可能です。

 おいしく食事できるかみ合わせを維持しながら虫歯や歯周病を予防し、口の周りの筋肉や舌を鍛える簡単なトレーニングなどで、口の機能を維持することが誤(ご)嚥(えん)や誤嚥性肺炎、要介護や寝たきりになりやすい重篤な疾患を予防し、健康寿命の延伸につながります。(新城綾乃 新城歯科医院=那覇市)