顔出しNGの敏腕ライターたちが、いま注目のタレントの素顔に迫る『ライターズ!』(日本テレビ系)。26日放送(深1:30〜)は、27日に放送される『THE DANCE DAY』(後7:00)で審査員を務めるTAKAHIROが登場。18歳から独学でダンスを学び、単身渡米。エンターテインメントの殿堂・アポロシアターで優勝を果たし、『Newsweek』誌の「世界が尊敬する日本人100」にも選出された世界的ダンサー・振付家だ。自身の半生も含めて、今回の見どころをたっぷりと語ってもらった。

■ダンスは「大樹」 審査は「幹」と「枝葉」

 1分30秒の音楽に、自分のダンスを乗せる――優勝賞金1000万円のダンスNo1決定戦が『THE DANCE DAY』だ。「ただ、楽しませた人の勝ち」をコンセプトに、ブレイクダンスから社交ダンス、現代舞踏まであらゆる表現がOKのまさに「究極のダンスバトル」。TAKAHIROは、その審査員を第1回から務める。

 しなやか、かつキレのある身のこなし。収録現場に数歩足を踏み入れただけで、まるでステージかのように空気が華やぐ。そして、ぐるりとセットを見回すと、「East 32nd StreetということはNYかな。『Yaeh! I think it is very good!』と叫んでいる人がいる。『ここに最高のインタビュアーがいるぞ!』ということですね」とさわやかな笑顔を向ける。目のつけどころが、まず違う。「これがワールドクラスのエンターテイナーか」と瞬時に心をつかまれ、インタビューがスタートした。

「今回は、これまで以上にすごいです」

 2022年に初開催され、第3回となる今回の手応えを、まずはそう断言したTAKAHIRO。

「第1回、第2回と、日本のトップダンサーたちが参加し、非常に大会を盛り上げてくれました。だから、『もしかすると、これ以上はないのかな』という思いもよぎりましたが、完全に杞憂でしたね。なぜなら、そのトップダンサーたちにとって、『THE DANCE DAY』という場が、自分たちの強いクオリティの作品を出すステージとして確立したからです。さらに、海外からの挑戦者に加えて、年齢制限の撤廃により今回から参加するキッズダンサーの存在も大きい。キッズ、本当にすごいです」

「さすがに大人に比べて見劣りするのでは?」と思いきや、「すでにプロレベル」とTAKAHIROは目を見張ったという。国境を越え、オールジャンル、オールエイジと自由度が増した本大会。審査員は、どんなところに注目しているのだろうか?

「たしかに審査は難しいですが、身体表現としてのダンスとは、ひとつの“大樹”であると考えてみてください。すべてのダンスに基礎となる幹があり、そこからそれぞれの表現という枝葉が生い茂っている。ですから、まず幹を見ます。どれだけ身体性が磨かれているか、たとえば『脚がどれだけ上がるか? つま先を伸ばそうとしているのか? 意図どおりにしっかりと美しいラインが描かれているか? ターンしたときにどれだけブレずにいるか?』といった技術。そして、『シーンチェンジがどれだけシームレスに行われているか? どれだけ豊富なシーンが盛り込まれているか?』といった“構成”。さらに、どれだけ新しいものを提示できているかという“オリジナリティ”。最後に、それらを含めた全体の“完成度”。これらを基本的な審査項目として、さらに大会のコンセプトである『ただ、楽しませた人の勝ち』という、その場でどれだけ鮮やかな枝葉が広げられたかというところを見ます」

 ロジカルな左脳で幹を見て、エモーショナルな右脳で枝葉を見る。左脳と右脳の両方に、どれだけ刺激を受けるかがダンスの見どころだ。

「『楽しませた人の勝ち』というのも、人によって“楽しい”は異なりますよね。素晴らしい技術に感動する人もいれば、豊かな感情表現に心がふるえる人もいる。どんな“楽しい”をダンスを通じて届けられるのか、そんな部分も問われていると思います。実際、予選を通じて、私も鳥肌が立つ感覚を何度も味わいましたが、『感動のスイッチは、いろんなところにあるんだな』と改めて気づかされました」

■キッズダンサーに圧倒…「心」は理論を超える

 これまで20年以上のキャリアのなかで培ってきた技術や理論を揺さぶられるものがあったとTAKAHIROは続ける。

 「最適な理論にのっとって最適な解が導き出されると、私たちはつい考えてしまうものです。ですが、今回の『THE DANCE DAY』でさまざまなパフォーマンスに接するなかで、決して理論的に完璧に組み立てたものではないのに、心を奪われることが多々ありました。そのとき、いつの間にか“心”を忘れてしまっていた自分に気がついたんです。なぜ自分はダンスを始めたんだろう、ダンスになぜこんなにも夢中になったんだろう、そんな“楽しかったあのとき”感じていたもの、そして“いまこのとき”にも自分のどこかにあるもの。それにもう一度出会えた気がします」

 大人になるにつれ、「頭」ばかり考えて、「心」を忘れていってしまう。その意味で、キッズダンサーの存在感は特別だ。

 「キッズダンサー、強し! 表現、発想の自由さは、大人を超えています。作品というのは想像を超えたときに感動が生まれますが、子どもの持つ無邪気さや大人の思い込みに縛られない自由さ、ストレートな感情表現は、想像をはるかに超えてくるものがあります」

 キッズだけでなく、「SEKAI NO OWARI」のヒット曲「Habit」の振付を担当した「パワーパフボーイズ」など、錚々(そうそう)たるメンバーが集結する決勝戦。「パワーパフボーイズもこの大会で発見されました。今回もネクストスターがきっといるはずですから、ぜひみなさんに見つけてもらいたいと思います」と力を込めた。

■「なにも自信が持てるものがなかった」ダンスはじめたきっかけ

 日本のダンス競技人口は2015年の時点で約600万人で、2025年には1100万人に達するといわれる(「一般社団法人ストリートダンス協会」による推計)。言語を超えた世界共通の表現として人気が高まっているが、TAKAHIROがダンスを始めたきっかけは、あるテレビ番組だったという。

 「高校生のときです。当時、厳しい学校に通っていたのですが、自分は勉強も運動もなにも自信が持てるものがありませんでした。心のなかで、『一回でもいいから、自分のことをすごいと思ってみたい』、そんな思いだけを抱いていました。そのとき、テレビで風見しんごさんが踊っているのを見たんです。『すごい! 自分とは全然違う!』。衝撃を受けました。そして、『もし、こんなふうに踊れるようになったら、自分のことをすごいと思えるんじゃないか』と、ためしにテレビの前でターンしたら、転んでしまいました。でも、なぜかそれがたまらなく面白くて。そうして、その日から一日中ダンスのことを考えるようになりました。どうやら、この世界にはルールはないらしい。なんでも自分が思ったようにやればいいらしい。学校では『〇〇しなさい』と言われるけれど、ダンスの世界では『○○しよう』は自分で作っていくものらしい。なんて自由なんだと没頭して、気がついたらこんな年齢になっていました(笑)」

 そんな無我夢中のダンス人生において、ターニングポイントとなったのは、大学卒業後に渡米し、アポロシアターに挑戦したことだ。

 「跳ね返されても、馬鹿にされてもいいから、一回だけ世界のトップで勝負したい。そうした思いが捨てきれず、マイケル・ジャクソンやスティーヴィー・ワンダーを輩出したアポロシアターのステージに上がりました。そのとき、まさか優勝できるなんて思っていませんでした。でも優勝できて、次も優勝して、次も優勝して――実際に飛び込んでみると、『なんとかこの世界でサヴァイヴしたい』という思いが芽生えてくるんです。必死になるんです。それまでの自分にはなにもなかったけれど、人生を変えたのは、アメリカ行きの飛行機に乗ったことです」

 テレビの前で転んだ、なにもなかった18歳の青年は、8年後に「世界が尊敬する日本人100」に選出される世界的ダンサー・振付家になっていた。

 「だから、みなさんにはまず自分の好きをふくらませていってほしい。『THE DANCE DAY』を見たら、いろんな“楽しかった”に出会うと思います。音楽、身体性、技術、表現……人それぞれの“楽しいの種”が散りばめられています。それを育てていってください。自分で踊ってみてもいいし、踊らなくてもいい。“楽しい”が見つかれば、そこからは自分だけの自由です」

 そう語るTAKAHIROにとってのダンスとは、「生命の主張」だという。

 「人間が一番最初に学ぶのは『リズム』です。心臓の鼓動であり、呼吸のリズム。そのリズムに乗せてなにかを表現するならば、そこには自然とメッセージが込められます。たとえば、地面という抑圧から離れて天にコネクトしようとつま先を上げたのがクラシックバレエであり、人間のなかにも答えがあると逆に地面と触れ合うようになったのがコンテンポラリーダンス。人と人のコミュニケーションとして社交ダンスが生まれ、争いをおさめるために生まれたのがブレイクダンス。つまり、生命のリズムがあり、そこになにかの主張が込められてダンスは生まれる。だから、ダンスとは『生命の主張』なんです」

 『THE DANCE DAY』で繰り広げられるさまざまな“生命の主張”から、ぜひ自分の“楽しいの種”を見つけてもらいたい。

(取材・文/マイティ・M)
※取材の模様は、26日放送の『ライターズ!』(日本テレビ 日曜深1:30)でもご覧いただけます。