Helen Reid

[ロンドン 30日 ロイター] - 中国発の電子商取引(EC)サイト、SHEIN(シーイン)がプラットフォームに米日用品大手コルゲート・パルモリーブや玩具大手ハズブロのような有名ブランドを誘致し、取り扱う家庭用品の品揃えを拡大しようとしている。

シーインは安価なプライベートブランドの衣料品やアクセサリーで知られるが、他の分野にも進出しつつある。昨年の米国、ブラジル、メキシコに続き、今年に入って英国、ドイツ、フランスなど欧州9カ国で各種ブランドや小売業者に同社プラットフォームへのアクセスを提供している。

こうした戦略は、信頼を構築して最大手アマゾンに対する競争力を高める取り組みの一環であり、今年に予定されている株式上場を前に事業の拡大と新たな販売手法の開発を可能にするものだ。

シーインは先月、コルゲート・パルモリーブ、ハズブロ、サントリー食品インターナショナル、スペインの化粧品ブランドのベラ・オーロラも参加したマドリードでのイベントで、「マーケットプレイス」サービスについて説明した。

シーインの欧州・中東・アフリカ担当ブランド・オペレーション・シニア・ディレクター、クリスティーナ・フォンタナ氏は4月17日にパリで開催されたイベントで「シーインといえば誰もがファッションを思い浮かべるだろうが、われわれはあらゆる(商品を販売するための)段階を手がけている」と述べた。取り扱う商品の幅を広げたのは顧客がシーインのサイトを開いて他のブランドを探していることが分かったことがきっかけで、「消費者が求めているなら、その商品を提供する」と胸を張った。

シーインは以前アリババで働いていたフォンタナ氏を含め、中国の巨大EC企業などからマーケットプレイスの専門家を何人か引き抜いた。

こうした人材獲得が事業の急速な拡大を後押しし、1月31日までの半年間に欧州連合(EU)加盟国の月間アクティブユーザー数は平均1億0800万人に達した。

しかしシーインの成長は、違法または有害な商品への対策を求めるEUの新しい規制という波紋ももたらした。

シーインのマーケットプレイスが成功を収め、アマゾンやアリエクスプレスと競合できるかどうかはどのようなブランドを誘致できるかにかかっている、と専門家は指摘する。

シンガポールのフォーレスタ―のアナリスト、シャオフェン・ワン氏は「シーインが信頼できる、評判の良いマーケットプレイスのプラットフォームとして競争したいのなら、欧米の有名ブランドからの支持が絶対に欠かせない」とくぎを刺した。

<熱心な売り込み>

4月25日に米国で開かれた、潜在的な出店業者を対象としたオンラインセミナーで、シーインの出店業者マーケティング責任者のクレア・リン氏は、何百万人もの買い物客にアクセスし、売上を 「急増」させる機会だと熱心な売り込みを展開。「当社のショッピング体験は(顧客がくっついて離れなくなる)粘着性が極めて強く、ゲーム的な要素が非常に多く盛り込まれている。当社のサイトでの買い物は楽しいため、最短の買い物時間は約8分と業界平均を大きく上回っている」と説明した。顧客は「Z世代」と「ミレニアル世代」で、女性と男性の比率は約80対20で女性が圧倒的に多いという。

リン氏によると、現在、家庭用品などの「ホーム」、「エレクトロニクス」、「ビューティー&ヘルス」が最も好調なカテゴリーで、扱っていない唯一のカテゴリーは食品・飲料。

オンラインセミナーで上映されたスライドによると、「ホーム」カテゴリーは販売された商品の総額が2023年に3倍に増加。エレクトロニクスとビューティー&ヘルスもそれぞれ2.5倍、2.1倍に増えた。

ブランド各社はマーケットプレイスを通じた直接販売によって売上高を大きく伸ばすことができる。ただ、こうした販売方式に踏み切る前に、そのマーケットプレイスが商品を売りたい顧客層に適していることや、価格設定とプロモーションをコントロールできることを保証するようECサイト側に求めるのが普通だ。

シーインのプラットフォームは多くのサードパーティー小売業者を引き寄せている。

コーダリー、セラヴィ、ラ・ロッシュ・ポゼ、資生堂、ジ・オーディナリー、リンメル、ヴェレダといった美容・スキンケアブランドは現在、サードパーティーの小売業者を通じて、米国、英国、ブラジル、メキシコのシーインのプラットフォームで販売されている。

しかしヴェレダの英・アイルランド・マネージャーであるジェイン・スターランド氏は、シーインでの直接販売は考えていないと述べた。マーケットプレイスを評価する際には評判、認知度、環境問題への取り組みが重要な要素だと述べ、ヴェレダが直接販売を行っているアマゾンのサステナビリティーへの取り組みを指摘した。

コルゲート・パルモリーブはコメント要請に応じなかった。ハズブロの広報担当は、マドリードのイベントに参加したのは「マーケットプレイスの長所と短所について一般的に話すため」だと述べた。

サントリーの広報担当者は 「シーインのマーケットプレイスで当社の飲料を販売することはないし、その予定もない。今回は単にベストプラクティス(最善の方法)を共有するための機会だった」と述べた。