日清紡マイクロデバイス(東京都中央区、吉岡圭一社長)は、2024年にアナログ半導体の増産投資を実施する。約80億円を投じて国内外の複数の生産拠点において生産設備を増強する。コロナ禍で半導体の需給が逼迫(ひっぱく)した経験を踏まえ、需要拡大に備えて安定的な供給体制を構築するのが狙い。前工程と後工程のそれぞれに対し、設備の増設と更新を実施する。

前工程で増強する拠点の一つが、やしろ事業所(兵庫県加東市)。同事業所では6インチ(直径約150ミリメートル)や8インチ(同約200ミリメートル)のウエハーを取り扱う。24年の設備投資はウエハーの熱処理時に歪むことを防止し、回路パターンを繰り返し形成する際の重ね合わせ精度を高めることを目指す。

後工程ではチップの電気的特性を測定して良品かどうかを判定するウエハーテストを強化する。子会社の日清紡マイクロデバイスAT(佐賀県吉野ケ里町)や、日清紡マイクロデバイス(タイ)で検査装置(テスター)の増設を計画する。前工程と後工程の増産規模はいずれも非公表。

親会社の日清紡ホールディングス(HD)はマイクロデバイス事業と無線・通信事業を拡大し、35年ごろをめどに全体の売上高に占める両事業合計の割合を23年の44%から80%以上に引き上げる目標を掲げる。今回の増産投資もこの戦略の一環となる。

世界半導体市場統計(WSTS)が23年11月末に発表した半導体市場予測によると、24年の集積回路(IC)市場は前年比15・5%増の4874億5400万ドル(約76兆円)に拡大する。このうちアナログICは同3・7%増の840億5600万ドル(約13兆円)に伸長する。


【関連記事】 パワー半導体の規模拡大に消極的だった富士電機が攻めに転じたワケ