Takahiko Wada

[東京 9日 ロイター] - 日銀が4月25―26日に開いた金融政策決定会合で、円安によって基調的な物価上昇の上振れが続けば「正常化のペースが速まる可能性は十分にある」との意見が出ていたことが分かった。国債買い入れについて、現状の毎月6兆円から減らすことも選択肢だとの指摘が出されたほか、日銀が保有する上場投資信託(ETF)の取り扱いを巡り「具体的な議論ができる環境になりつつある」との発言もあった。

日銀が9日、決定会合で出された主な意見を公表した。同会合では、全員一致で政策金利の据え置きを決めた。

年初来の円安進行を受け、決定会合でも円下落の影響について議論された。ある委員は、円安と原油高は「コストプッシュ要因の減衰という前提を弱めており、物価の上振れ方向のリスクにも注意が必要だ」と指摘した。

円安は短期的に輸入価格の上昇を招いてコストを押し上げ、経済を下押しするが、インバウンド需要の増加や製造業の国内回帰などを通じ「中長期的には生産や所得への拡張効果もあるため、基調的な物価上昇率の上振れにつながり得る」との意見も出ていた。

先行きの政策金利について、ある委員は「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)の見通しが実現すれば「約2年後に2%の物価目標を持続的・安定的に実現し、需給ギャップもプラスになる」と指摘。金利のパスは「市場で織り込まれているよりも高いものになる可能性がある」と話した。

物価目標達成時の不連続かつ急激な政策変更によるショックを抑えるために「経済・物価・金融情勢に応じて、緩やかな利上げを行うことで金融緩和度合いを調整することも選択肢」との指摘もあった。

金融緩和のさらなる調整を検討するに当たり、堅調な設備投資の継続や賃上げを契機とする年後半に向けた個人消費の改善傾向を、夏場にかけて確認することがポイントになるとの声も出た。

日銀は決定会合で、国債買い入れについて「3月の金融政策決定会合において決定された方針に沿って実施する」とし、月間6兆円程度の買い入れを維持した。ただ、委員からは、国債の需給バランスを踏まえ、市場機能の回復を目指す観点から「現状6兆円程度の毎月の長期国債買い入れを減額することは選択肢だ」との意見も出ていた。

ある委員は、国債保有量の正常化や過剰な水準にある準備預金の適正化のため、日銀のバランスシートの圧縮を進めていく必要があると主張。昨年、段階的にイールドカーブ・コントロール(YCC)の運用を柔軟化したことが、円滑な出口戦略につながったと述べ「国債買い入れの減額も、市場動向や国債需給を見ながら、機を捉えて進めていくことが大切だ」と話した。

日銀は同会合に先立つ3月の金融政策決定会合で大規模な金融緩和を終了し、ETFの新規買い入れも終えた。

保有するETFや不動産投資信託(REIT)の取り扱いは今後の焦点の1つで、ある委員は4月の会合で、市場動向を踏まえれば「具体的な議論ができる環境になりつつある」と述べた。別の委員はETFの処分方法が株式市場の機能に与える影響や市場に及ぼすインパクトの大きさなどを考慮する必要があり「簡単な解決策はない」とする一方、「仮に長い時間がかかっても方向としては残高をゼロにしていくべきだ」と発言した。