Ritsuko Shimizu

[東京 23日 ロイター] - 5月のロイター企業調査で、日本経済がデフレから脱却したかどうか尋ねたところ「すでに脱却している」が27%、「まだ脱却していない」が33%と、企業はデフレ脱却に確信を得られていない状況にあることが分かった。政府によるデフレ脱却宣言がなされた場合、物価・人件費などのコスト上昇を懸念する声が82%に上った。

調査は5月8日─5月17日。調査票発送企業は493社、回答社数は229社だった。

まだデフレから脱却していないとする企業からは「可処分所得が増えておらずデフレ脱却とは言えない」(不動産)、「実質賃金は低い状態が継続しており、本格的な国内景気回復には至っていないと思う」(情報サービス)など、厳しい見方が出ている。

すでに脱却したとする企業からも「スタグフレーションの恐れがある」(輸送用機器)とのコメントがあったほか、何とも言えないと回答した企業からは「景気が良くなり、物価が上がった実感がなく、何とも言えないのが大半の国民の実感ではないか」(運輸)、「日本のインフレがコスト上昇によるものか、需要増大によるものか見極め必要」(卸売)など、判断にはもうしばらく時間を要するとの見方が聞かれる。

岸田文雄首相は3月28日、2024年度予算の成立を受けた記者会見で「デフレ完全脱却のための最大の正念場」と述べていた。

政府がデフレ脱却宣言を行った場合の影響については「物価・人件費などのコスト上昇」を懸念する企業が82%に上ったほか、金利上昇を受けた「利払い負担増」が33%となった。一方、プラス要因としては「値上げが容易になる」が30%、「売上高が拡大する」が17%などとなった。

企業が取引先との関係維持などで保有する「政策保有株」を減らす動きが目立ってきている。大手損保各社は不祥事をきっかけに「ゼロ」を打ち出したほか、トヨタグループも積極的に動いている。

総資産に占める政策保有株の割合は「1―10%」が54%と最も多く、「ゼロ」も33%となっている。現在保有している政策保有株を今年度中にどの程度売却するかについては、「11―30%削減」が7%、「1―10%削減」が14%などとなった。「年度毎の削減目標は掲げていないが、縮減していく方向」(窯業)という声のほか、現状では決まっていないものの「担当役員が保有合理性がないと判断した政策保有株式については、経済環境や株価等を考慮しつつ 売却・縮減を行う。可否は必要に応じて取締役会で審議」(電機)、「政策保有株の最適化に関しては、来期発表の新中期経営計画に掲載予定」(情報サービス)など、削減方向で検討しているとの声も多く聞かれた。

政策保有株削減の動きを受けて、個人株主が安定株主として注目されている。1年前と比べて個人株主が「増えた」企業は33%となり「減った」とする14%の倍以上の割合となった。

個人株主拡充策としては「個人株主向け情報開示の充実」が39%、「株主優待の導入・拡充」が19%などとなった。このほか「配当の増額」(化学)との回答が複数聞かれたほか、自社への理解を深める意味で「株主をショールームに招待」(機械)と回答した企業もあった。一方、特に何もしてないと答えた企業も45%に上った。

(清水律子 グラフィック作成:照井裕子 編集:石田仁志)