沖縄の施政権を米国が日本に移管した「復帰」から、15日で52年を迎えた。台湾有事に備えた「南西シフト」も進むなか、この日から那覇市の中心市街地を含む県内31カ所が新たに安全保障上重要な施設の土地取引を規制する「土地利用規制法」の区域に指定された。

 那覇市内の対象区域で記者が100人に話を聞くと、説明なく政府が新たな負担を課していくことへの戸惑いが広がっていた。

 調査は、那覇市で土地利用規制法の「注視区域」「特別注視区域」に指定される区域で9〜11日に行った。質問は(1)この地域が区域指定されることを知っているか(2)政府の土地利用調査・規制への理解度(3)沖縄の基地負担の軽減度。3問すべてに回答する人が100人に達するまで続けた。

 今回の指定では、県庁がある泉崎も注視区域になった。文具店を営む女性(68)は「え、5月から指定されるの? 復帰の日に?」と驚いた。83歳男性は「国の安全保障は大事」と調査・規制には理解を示したが、「なぜ泉崎地域が対象になるのかが分からない」と首をかしげた。

 政府は4月12日に県内31カ所の指定を告示したが、住民への説明会はない。指定を「知っている」と答えたのは100人中14人。調査に加え、200平方メートル以上の土地の売買で事前届け出が義務化される小禄駅周辺の特別注視区域の住民でも「知っている」は50人中11人だった。

 「日本の土地は外国勢力が簡単に買えるので調べるのは理解できる」(サービス業の53歳男性)「危険を前もって知るには必要」(清掃業の67歳女性)など、政府の調査・規制に理解を示す人は50代を中心に30人。「どちらとも言えない」が36人、「理解できない」が34人だった。

 米軍統治下の土地収用を知る70〜90代は「軍用地」になる不安を口にした。米軍から返還された安謝に住む男性(90)は記者に尋ねた。「またとられるんじゃないよな?」