日本銀行が国債の買い入れを減らす背景には、金利を低く抑えるため大量に購入してきた国債の保有割合が米欧の主要中央銀行と比べても突出した規模に膨らんでいるという事情がある。減額によって金利がより自由な形で決まるようにするとともに、日米の金利差を縮小させ、歴史的な円安に歯止めをかける狙いもあるとみられる。

日銀が国債を買い入れる際は通常、購入額を通知し、入札でより高い利回り(低い価格)を提示した機関投資家から優先的に買い入れる。市場の需給が引き締まれば、国債の価格が上昇して金利は低下する。逆に需給が緩めば国債の価格は下落し、金利は上昇する。

日銀は大規模な金融緩和策の一環で長期国債の大量買い入れを続け、住宅ローンや企業向け融資に適用される市場金利を低く押さえ込んできた。その結果、日銀の現在の国債保有額は約600兆円と国の発行残高の過半を占める。これに対し、米連邦準備制度理事会(FRB)の保有割合は2割弱にとどまる。

買い入れ額を減らすと、満期が来た分の償還に伴って保有残高は縮小することになる。

3月の金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除後も、金利の急変動を避けるため月6兆円程度の買い入れを続けてきたが、5月13日に1回当たりの国債購入予定額を500億円減らした。

日銀は市場関係者の意見を聞いた上で国債買い入れの本格的な減額に踏み切る方針だ。みずほ証券の丹治倫敦チーフ債券ストラテジストは「国債の買い手がつかず、金利が急騰するリスクもある。さじ加減が重要だ」と指摘した。(宇野貴文)