公開中の作品から、文化部映画担当の編集委員がピックアップした「シネマプレビュー」をお届けします。上映予定は予告なく変更される場合があります。最新の上映予定は各映画館にお問い合わせください。

「ブルー きみは大丈夫」

もこもこした紫色のキャラクターのデザインが比較的平凡で、期待していなかったのだが、感動に包まれて試写会場を出た。

原題は「空想の友だち」を意味する「IF」。アニメ「屋根裏のラジャー」(百瀬義行監督)の原作となった英児童書など、欧米では子供の頃にだけ見える空想の友だちを題材にした作品が少なくないようだ。

主人公のビー(ケイリー・フレミング)は、母親を亡くした12歳の少女。父親も入院し、身を寄せている祖母のアパートで、怪しい男(ライアン・レイノルズ)と紫色の不思議な生物を目撃する。

子供と大人の間を揺れるビーという繊細な存在を媒介に、IFたちが大人になったかつての友だちと〝再会〟を果たしていく姿が胸を打つ。

テンポ感と上質なユーモア。ティナ・ターナーやハチャトリアンの楽曲など音楽の使い方もうまい。監督・脚本は大ヒットホラー「クワイエット・プレイス」のジョン・クラシンスキーだというから驚きだ。家族向けだが、ビーの祖母のようにかつての子供たちにこそ勧めたい。米映画。

14日から全国公開。1時間44分。(健)

「ディア・ファミリー」

余命宣告をされた娘を救おうと無謀にも人工心臓の開発に取り組み、日本人の体格に合った初の国産バルーンカテーテルを生み出した町工場の社長の実話に基づいた人間ドラマ。

娘のため専門外の医療器具製造に人生をささげる主人公に大泉洋。歌に司会に大忙しの人気者だが、主人公の決して諦めない姿勢は、どこか大泉自身に通じているように見え、適役だ。心臓を患う娘に東宝シンデレラの福本莉子。けなげな役をやらせたらピカイチだ。

監督は「君の膵臓をたべたい」の月川翔。家族愛と開発の奮戦物語が軸で、〝病気もの〟が苦手だという人にも勧めたい。

14日から全国公開。1時間56分。(健)

「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」

1970年、米ボストン近郊の全寮制のバートン校が舞台。クリスマス休暇で大半が帰郷する中、生徒からも同僚からも嫌われている考古学の教師、ハナム(ポール・ジアマッティ)は、家に帰れない生徒4人の〝子守役〟を押し付けられる。

その一人、アンガス(ドミニク・セッサ)は複雑な家庭環境のせいか反抗的。寮の料理長、メアリー(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)は一人息子をベトナムで亡くしたばかり。それぞれが抱える孤独を体現した3人の名演が光る。

ランドルフは米アカデミー賞助演女優賞を受賞。監督はアレクサンダー・ペイン。米映画。

21日から全国順次公開。2時間13分。(啓)

「罪深き少年たち」

韓国のスーパーで強盗殺人事件が発生し、少年3人が逮捕される。だが、刑事のファン・ジュンチョル(ソル・ギョング)は「真犯人は別にいる」という情報を入手。強引な取り調べによる冤罪という確信を得た彼は、少年らの無実を証明しようとするが…。

「折れた矢」「権力に告ぐ」のチョン・ジヨン監督が、実際の事件を基に製作した社会派ドラマ。

真犯人が自白したのに、警察の威信のために罪を着せられた少年たち。一度は敗北を受け入れた刑事と彼らが、長い後悔と苦悩の末、間違いを正そうと立ち上がる姿を熱量いっぱいに描き出した。12歳以下の鑑賞には保護者らの助言・指導が必要。韓国映画。

全国公開中。2時間4分。(耕)