競馬の祭典、第91回日本ダービーで、3歳馬7906頭の頂点に立ったのは、横山典弘騎乗で9番人気のダノンデサイルだった。

好スタートを決めると、無敗でクラシック2冠を狙うジャスティンミラノと絡み合いながらレースを進め、最終コーナーを回った直線で狭い内ラチ沿いを突いて一気に抜け出すとそのままゴールを駆け抜けた。ファンからの声援を受けると左手を天に掲げ、右手で何度もガッツポーズ。そして激戦を勝ち抜いた盟友に優しく触れた。

ダービー3度目、56歳3カ月の最年長優勝に、横山典は「毎回、勝つたびに違う思いがこみ上げてきますね」と語ったが、今回は過去2回とは全く次元が異なっていた。

クラシック3冠の初戦、4月の皐月賞でレース直前に歩様に異常を来し、右前肢ハ行で出走を回避した。「(出走を)やめるという自分の決断が間違っていなかった。スタッフに改善してもらって今がある。それが結果として現れたのがうれしい」と横山典。昨年10月のデビュー戦からコンビを組んできて、素材の良さや調教法を熟知してきたことが、好判断につながった。

それでも、急な除外からダービーまでの6週間は苦難に満ちたものだった。安田調教師は「しんどかった。皐月賞を走った後なら疲労をケアしてリセットすればよかったが、出走していないのに同じくらいの負荷をかける必要があった。馬の精神力、集中力を維持することが難しかった。想像以上に成長してくれた」と振り返った。

1週前の追い切りでは、予定を変更してまでコンディションをつかんでもらいたいと考え、横山典がまたがった。直前の追い切りでは、安田調教師自らが乗り込んで最終的な状態を確かめた。馬の持つ能力が大舞台への不安を自信に変化させた。

ダービー馬となれば、秋以降が注目される存在。困難を乗り越えた経験が可能性を広げていく。