4期15年にわたった静岡県の川勝県政は、5月9日幕を下ろします。SBSでは激動の15年を検証します。川勝知事が長年、対峙してきたリニア問題では「命の水」を守りつつも国やJR東海との対立が鮮明になりました。

茶処、菊川市で40年以上茶を育てる赤堀富洋さんです。大井川流域にとって欠かせないのが「命の水」です。

<共栄製茶農業協同組合 赤堀富洋組合長>
「大切な水ですから、他の所に流れていってしまうことがないように、有識者の方と相談しているなかで、(川勝知事が)大切に水を考えていることは非常にありがたいこと」

流域60万人が使う大井川の水を守るため、川勝知事はリニア工事を認めませんでした。

<川勝平太知事>(2019年6月)
「とてもではないけど(工事の)GOサインを出せる状況ではない。納得できるものが返ってこない限り、本体工事は取りかかれない」

2019年6月、リニアの静岡工区を視察した川勝知事。国策ともいえるリニアは品川と名古屋をわずか40分で結ぶ計画です。しかし、トンネル工事で流出した水の「全量戻し」にこだわり、県とJR東海の議論は膠着状態になりました。

<坪内明美記者>(2020年6月)
「今、JR東海の金子社長を乗せた車が県庁正面入口に到着しました」

こうした状況を打開しようと当時のJR東海のトップが準備工事を直談判しました。

<JR東海 金子慎社長(当時)>
「今ダメだと言われると、2027年は難しいなと、だめかなと、残念だなということで」

しかし、川勝知事は金子社長に問い詰めます。

<川勝平太知事>
「仮に水は戻せない。ダメだとなったらどうしますか?」

<JR東海 金子慎社長(当時)>
「私はそれは考えにくいと思っています」

<川勝平太知事>
「私はあると思っています」

議論は進展しないまま、トップ会談は終了しました。

<川勝平太知事>(2021年6月)
「命の水を守るために水源である南アルプスを守らなけれなばらない」

前回の知事選で強調したのも「命の水」を守る姿勢です。結果、自民推薦候補に圧勝し、4選を果たしました。

静岡工区をめぐる工事については、水の「全量戻し」につながる田代ダム案が示され、国の有識者会議の報告書もまとまりましたが…。

<川勝平太知事>
「沢周辺の生態系について予測されていない。こうした課題があるので、こうした課題に対して、有識者会議では十分に議論されずに解決されないまま報告書が取りまとめられた」

南アルプスの環境保全にも課題が残るという姿勢を崩さない川勝知事。解決の糸口は見えなくなります。

<JR東海 丹羽俊介社長>(2024年3月)
「残念ながら品川〜名古屋間の2027年の開業は実現しない」

2027年開業の断念。リニアの開業は早くとも2034年以降になりました。その発言の4日後、川勝知事は突然、辞意を表明したのです。

<川勝平太知事>(2024年4月)
「リニア問題は大きな区切りを迎えている。これが1番大きい」

自身の失言が招いた辞職にもかかわらず、その理由に挙げたのはリニアの開業延期でした。

<愛知県大村秀章知事>(4月10日)
「誰が何を言っとるんだ。最近のはやりで言うと『おまいう』(お前が言うな)」

リニア沿線の知事たちは怒りをあらわにしました。

「命の水」を守りつつも、国やJR東海、沿線自治体との対立を残したまま、川勝県政は幕を閉じます。

<川勝平太知事>(2024年4月)
「どこにも私どもは早期開通につきまして足をひぱっているというようなことをしたことは一度もありません」