グローバルXジャパンが運用するETF「グローバルX インド・トップ10+ ETF」<証券コード:188A>が5月23日、東証に新規上場された。インドを代表する大型株15銘柄に投資するETFで、過去のパフォーマンスはインドの代表的な株価指数である「Nifty50」や「SENSEX」を上回っている。新NISA「成長投資枠」の対象商品(上場ファンド)になっている。グローバルXジャパンの営業第一部長の長谷川誠氏(写真:左)とアシスタント・ディレクターの宮本将圭氏(写真:右)に、インド経済の見通しとETFの特徴について聞いた。

 ――新たにインド株ETFを提供する背景は?

宮本 インド経済の高成長の魅力を資産運用に取り入れていただきたいと考えたのが第一の理由です。インドは経済政策や人口増などを背景に高い経済成長を続けています。2024年の実質GDP成長率の予想は6.8%、2025年は6.5%とIMFでは予想しています(2024年4月時点)。これは、米国の2.7%、1.9%、また、中国の4.6%、4.1%という成長率予想よりも水準が一段と高いものです。

 インドは2023年時点の名目GDPの規模が世界第5位ですが、2027年には日本やドイツを抜いて世界第3位になると予想されるなど、今後も長い期間にわたって高成長が持続する見通しです。その背景の1つが巨大な人口です。インドは2023年に中国を抜いて世界一の人口大国になりましたが、特に重要なことは生産年齢人口(15歳〜64歳)がその他の人口の2倍以上になる人口ボーナス期が、2050年まで続くと予想されていることです。人口ボーナス期には消費拡大などにより経済成長が促されますので、長期にわたる成長を支えます。

 一方で、インドの1人当たり名目GDPは約2,410ドルで、これは、日本の1970年代に相当します。一般的に、1人あたりGDPが3,000ドルを超えると家電などの耐久消費財の需要が急速に高まるといわれています。そして、5,000ドル〜1万ドル程度になってくると自動車が普及するようになります。これから、インドでは段階を踏んで経済発展していくことが期待されます。

長谷川 インドは、今のところ唯一残されたフロンティア市場といえると思います。新興国で経済成長が期待できる国は他にもありますが、既に世界第5位という大きな経済規模で、しかも、人口が14億人を超えるという国は、他にありません。経済規模が大きいと、そこでは様々なビジネスが勃興します。そのため株式市場としての魅力も非常に大きいのです。

 ――インドは今年総選挙が行われていますが、それによる変化は?

宮本 現在のモディ政権が継続的な支持を得て第3期を迎えると予想されています。既に4月19日から投票は始まっていてインド全国で7回に分けて投票し、6月4日に一斉開票される予定です。

 モディ政権は2014年からの第1期においてはインフラ整備に力を入れました。2019年からの第2期では、法人税改革や補助金制度の整備などによって製造業の振興を行いました。そして、2024年からの第3期では高速鉄道網の整備など、国民生活をより豊かにするためのインフラ整備に力を入れて行くことを公約としています。

 モディ政権では外国資本がインドに参入しやすい土壌をつくっています。もともと英語が第二公用語であり、多くのIT人材が育っています。また、インドは歴史的にカースト制度という身分制があって就職の制限があるのですが、IT産業は新しい産業なのでカースト制度の概念に縛られにくく、多くの成功のチャンスがあると、優秀な若者が競ってIT産業に入っています。

 モディ政権は全方位外交政策をとっています。G7を中心とする民主主義的な国だけでなく、ロシアや中国など権威主義的な国とも中立的な立ち位置をとっており、外国企業を上手く誘致しています。外国資本が入ってくることによって、新たな雇用が生まれ、その結果、国民の所得も向上するという好循環が続いています。

長谷川 モディ政権は、1期目から2期目、そして、2期目から3期目へと政権を重ねることで、より大掛かりな政策を掲げ、着実にインドの先進国化を進めている印象です。

 インドのIT人材については、米マイクロソフトやグーグルで現在インド系のトップが活躍しているように、非常に優秀な人材が育っています。幼少期からプログラミングを学ぶなど国家の教育戦略としてITを重視している学校教育にも注目すべき点があります。そして、これまでは優秀な人材は海外に留学し、そのまま海外で就職していたのですが、近年は海外の学校を卒業後にインドに戻って就職したり、起業したりする若者が増えています。ちょうど、2000年頃に、中国でテンセントやアリババ、バイドゥなどが勃興した頃と同じような状態に、今のインドがなってきていると感じます。

 ――「グローバルX インド・トップ10+ ETF」の特徴は?

宮本 当ETFが採用する株価指数「Mirae Asset India Select Top10+ Index」は、インドで成長の見込まれる9つのセクター(コミュニケーション・サービス、情報技術、金融、ヘルスケア、生活必需品、一般消費財・サービス、資本財・サービス、エネルギー、素材)から時価総額の大きな銘柄を選んで合計15銘柄で構成しています。まず、9セクターから時価総額の大きな2銘柄をピックアップし、それぞれのセクターのトップ銘柄は組み入れ対象とし、第2位の銘柄を時価総額順に並べて大きい順に6銘柄を採用するというプロセスで組み入れ銘柄を決定します。この結果、特定のセクターに偏ることなく、インド株式市場全体を捉えた大型株のポートフォリオが構築されます。

 インド経済は、農業、工業、サービス産業が概ね均等に成長を遂げてきています。9セクターに概ね均等に投資するポートフォリオは、インド経済の発展を捉えるという点でも相応しいポートフォリオになっていると思います。

 この指数の算出開始日は2024年4月5日ですが、バックテストしたデータでのパフォーマンスは2008年6月20日から2024年4月30日までで年率リターンが12.40%、年率リスクが19.14%でした。同期間のインドの代表的なインデックスである「Nifty50」は年率リターンが11.74%、年率リスクが19.67%、「SENSEX」は年率リターンが11.79%、年率リスクが19.56%という結果でしたから、代表的なインデックスに対してリターンが高く、リスクが低いというリスク、リターン特性となっています。安定的に代表的なインデックスを上回っているのが特徴です。

長谷川 インドの株式市場は、銘柄数では大型株が約20%、中小型株が約80%という比率ですが、時価総額では大型株約80%、中小型株約20%という比率になります。このことからも大型株に投資することによって市場全体の動きを捉えやすいといえます。当ETFは、インド株全体に投資してインド経済の成長を資産形成に活かしたいと考える投資家に適していると思います。

 当社の提供するETFの特徴の1つでもあるのですが、このETFの参照株価指数も結果的にインドの代表的な株価指数を安定的にアウトパフォームする実績を示しています。インド株式に投資してより高いリターンを目指したい投資家の投資の一助となれば幸いです。

 ――ETFの活用についてアイデアは?

長谷川 コア・サテライトの考え方では、日本の投資家にとっては米国株や日本株などがコアのアセットとなり、インド株や中国株はサテライトの位置づけになると思います。そのため、資産の半分ほども持つというより、一定の比率で保有することによって、資産全体のリターンを引き上げてくれる存在になり得ます。投資のタイミングが難しい部分もあると思いますが、株価の下落を待つというより、毎月の積立投資など、コツコツと投資することも1つの方法です。当ETFは1口あたり約1,000円程度ですので、毎月少額で積立投資が可能です。

 高成長の新興国をサテライト資産として組み入れても、その国が世界で20番目とか、もっと小さな経済規模の国だった場合は、将来的に他の国に注目が移って投資家から忘れられてしまうリスクがあると思うのですが、インドのように既に世界第5位の大国で、今後、順位を上げて来る国は、忘れ去られるリスクは低く、常に投資対象として意識される国であり続けるでしょう。その点で、長期投資の対象となる資産だと思います。ただ、個々の株式に投資しようと考えると、投資情報の取得など個人投資家にはハードルが高いのも事実です。徐々に市場開放は進んでいますが、当面は現在のような環境が続くと思います。この辺りもETFを活用するメリットになります。

 かつて、インドへの投資が注目された2000年代前半の当時は、「BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)」という有望な新興国の中の1つとして注目されていました。今では、新興国株投資で期待できる国の筆頭として注目され、世界中からインド株式市場に資金が流入しています。今後、市場開放が進めば、一段とインド株式市場への資金の流れは太く大きくなって、株高を支える要因にもなるでしょう。長期に成長が期待できる資産としてインドの代表的な大型株に投資する「グローバルX インド・トップ10+ ETF」にご注目いただきたいと思います。