5月1日、世間はゴールデンウィーク真っ只中。人気漫才コンビ・金属バットにとって忘れられないゴールデンウィークの思い出とは。

紙と電子で分断が生まれている出版業界と喫煙業界の共通点?

——3月に新幹線の喫煙ルームが廃止されて1か月が経ちました。新幹線移動の多い喫煙者のお二人はどう過ごされているんですか。

友保
 もう慣れました。指噛んで、痛みでごまかしてます。2時間半。

——イギリスでは若者が紙巻きタバコを買えない法律が可決されたそうです。2009年生まれ以降が買えなくなると。どこの国でも喫煙者にとって世知辛い時代になりました。

友保 
イギリスね、あっこほんまもうぐちゃぐちゃですからね。近いうちに国名が「新イギリス」になるらしいですよ。電子タバコはいけるんですかね? 

——電子は買えるみたいですね。

友保 
電子みたいなもん生み出すからそうなる。悪魔の発明ですよ。喫煙所もね、紙と電子でわけてたりするじゃないですか。なんの意味があんですかあれ。
 

——確かにいらぬ分断を生んでます。

友保 
よくない。ベルリンの壁からなにも学んでない。紙も電子も同じ民族ですよ。みんな歯ぁまっ黄っ黄、まっ黄っ黄の民やのに。それを無理やりわけるから。身内で揉めさせて潰すっていうね。ただね、これ、俺見つけたんすよ。

——なにをですか。

友保 
これの黒幕はフリーメイソンです。1ドル札を曲げてくれたらわかります。なんかうまいこと曲げてくれたら。タバコとフリーメイソンのマークが合体するようになってる。

——やめてください。本当に信じる人いるから。

友保 
いやこれほんまなんですよ。
 

——「やっと金属バットが真実をいってくれた! ありがとう!」みたいにコメントに書く人いますから。

小林 
なにがありがたいのか(笑)。

友保 おまえたち、俺のもとへ集え。新自由軍を結成してフリーダムウォーを仕掛けます。まずは喫煙所から。

小林 たしかにもともと全員紙巻きタバコ吸ってたわけやもんな。全員紙出身やのに。なんでわけてんのやろ。

友保 こっから電子出身の新たな層が生まれてくる。

——電子生まれ、電子育ち。

友保 充電してるやつはだいたい友達。
 

——それは出版業界と一緒かもしれないです。もう紙を知らない人いっぱいいますもんね。WEBしか知らない。

友保 紙で本読んでるやつは田舎もんしかいねえよな〜って。とんでもねえですね。紙媒体がエコじゃないとかいってるやつは、ほんま『北斗の拳』読んでほしいですよね。最終的には、ケツ拭く紙になるっちゅうのをね、わかってない。

連休中の増額はゲーセン50円、コンビニ500円

——新幹線喫煙所が廃止されて、はじめてのゴールデンウィークがはじまります。お二人のゴールデンウィークの思い出は?

友保 最近はずっと仕事ですけど。

小林 ちょっと前までずっとバイトですね。どっちにしても忙しい。新幹線がもうエグいときあったなぁ。デッキに立ったままで帰ったことありますよ。

——たしか最近のゴールデンウィーク中は自由席がなくなってますよね。

友保 どんどんよくなくなってんな、新幹線。7号車もね、なんか仕事する車両にされて。そんなんしやんでええて。
 

——そういえば喫煙ルームは今どうなってるんですか?

友保 喫煙ルームには今お地蔵さんが一体置かれてます。その地蔵、タバコ吸ってます。

——(笑)。そんなお二人のゴールデンウィークといえば。

友保 わしゲーセンでバイトしてたんですよ。ゴールデンウィークはやっぱむっちゃ客くるし、絶対休みたいじゃないですか。俺がバイトしてたとこが、ゴールデンウィークとか年末年始は時給50円プラスなんですよ。いやいやちょっと待てよ、と。いつもの仕事の1.5倍から2倍ぐらい忙しいのに50円ってどういうこっちゃと。だから、みんなシフト入らんかったんですよ。で、上の人がめっちゃ怒って50円プラスやめるっていい出して。マジでアホ。そりゃつぶれるわ。
 

——そういうときに働いてくれる人、大事にしないとですね。

小林 コンビニは500円プラスでしたよ、その時期。


——ええ!? ケタが違う。

小林 みんな入りたがりすぎて、逆に入られへん。

友保 俺なんか、ないライブのこというて休んでたわ。休みすぎて、ふつうに休ませてくれないから。店長が「友保くんその日は何ていうライブがあるんや?」と。適当に「あ〜“かっとびライブ”っていうのがありまして…」とかいうと「どこでやってるんや?」「難波の⚪︎⚪︎で…」、存在しないライブ会場いうて。
 

小林 (笑)。

友保 さらに「誰が出てんねん?」って、詰めてくるから「シーチキン佐野さんです」と。

小林 そこだけ実在やな(笑)。

退職する店長へ友保が贈ったみんなが絶句したプレゼント


——「とんだバイトの給料だけ取りに行く」でおなじみの友保さんならではですね。

友保 ありとあらゆる手で逃げてましたからね。一回身内がちょっと不幸あって、ガチで死んで、3日休ましてもらったんですよ。で、帰ってきたときに「友保くん、どうやった?」いわれて、一瞬「あ、どれやったっけ!?」となりました(笑)。

小林 うそつきすぎてるから(笑)。

友保 あ、そんときはほんまのやつやったって(笑)。あぶなかった。その店長「穴田さん」っていうんですけど、俺いないとこで「アナ●さんアナ●さん」って呼んでて、本人の前でも「アナ●さん、あ、ちゃう」っていってもうたもんな。
 

——よくない(笑)。

友保 ちゃんと間違えたもんね(笑)。そのアナ●さんがやめるってなって、最後みんなでプレゼントあげようって全員のお金俺が集めて、信長書店行ってエネマグラ買うて。これはウケるぞ思ってパッと渡してむっちゃスベったわ。

——よくない。

友保 エネマグラ知らん子もおるんですね。「なにこれ?」「港にある足置くとこ?」って。

小林 生で見る機会あんまないもんな(笑)。

友保 「これなんなの?」って聞かれても、「まあまあ」としか(笑)。いいボケ浮かんだ思たんやけどな。やっぱその瞬間「売れへんな」と思いました。

小林 売れる人はわかりやすいようにローターとかにすんのよ。

友保 売れる人は花や。「花」と「寄せ書き」。アナ●さん元気かな……ダーツバーやるいうてたけど、たぶん潰れてんやろな……。
 

——働く人と遊ぶ人がはっきりしているのがゴールデンウィークかもしれないですね

友保 昔宅急便も届かなかったですもんね。物流が止まるから。堺東にあるジョルノ、あそこも閉まってましたよね。ゴールデンウィークやから。

——ジョルノってなんですか?

友保 ヤンキーが集まる九龍城です。

小林 よくいえばデパート。

友保 ゲーセンもおもちゃ屋も菓子屋もある。漬もん屋もありましたね。地下一階に。くっさいの。地下二階にはこの世で一番ちっちゃい百均もありました。

「なんでそんなタバコ好きなん?」

——そんなジョルノの中の店舗もゴールデンウィーク中は閉まってるんですか。

友保 ただヤンキーは稼ぎどきやからくんねんな。ジョルノに集まってくる。

小林 正月もめっちゃやばい。みんなお年玉にぎってやってくるから。

友保 ヤンキーの繁忙期。旅行なんか行かんかったもんな、ゴールデンウィーク。

小林 行かんなぁ。

友保 みんな行ってんねんな、旅行。こどもの日とかもそうですよね。金もろてる家あるらしいな

小林 え?
 

——え?

友保 あ、やっぱないでしょ? なんか噂にはあるらしい。お金もらえる、おじいから。おめでとういうて。信じられない。どういう大人になったんやろな、あの金持ちの子。

小林 5日がこどもの日やろ、3日は憲法記念日で、4日ってなんやっけ

——4日はみどりの日です。

小林 みどりの日……?

——「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心を育む」日らしいです。あとはなぜか毎年その日に「マリファナマーチ」というデモをやってますね。

友保 タバコ吸えよ、タバコと酒あんねんから。増やしてどうすんねん、二個で十分なんやから。でも向こうもいうてんやろな、「なんでそんなタバコ好きなん?」って(笑)。
 

——タバコのほうが体に悪いという方もいらっしゃいますね。

友保 両方とも体に悪いでしょうよ(笑)。よう「マリファナは大丈夫だから」いうじゃないですか。ちゃんとその後、覚醒剤やってるんやろな。

——しかしよくわからないのが、一体ゴールデンウィークとはどこからどこまでをいうのか。よくニュース番組で「ここ(4/30〜5/2)を休むと10連休です」とかいいますけど、ここ休めないんだよといつも思います。

友保 みんなけっこう働いてるんですね。思い出しましたわ。俺、ゲーセンのメダルゲームのとこで働いてたんですけど、ゴールデンウィークに外国人のお客さんきたんですよ。ほんまに初めて日本に来たみたいな。それこそ15年ぐらい前なんで、今みたいに外国人観光客あふれかえってなくて。メダルゲームしはって、でカウンターに来てバーン置いて「換金してくれ」「チェンジ」みたいな。「やってませんで」っていうたら「オーケーオーケー」って、紙に「50/50」って書いて見せてきた。
 

小林 おまえに半分やるからと(笑)。

友保 あ、アホやなおまえ!って。「ちゃいますねん」いうたら外人さんが「じゃあ何のためにやってんねや?」と。

小林 ほんまに真実で切ってきた(笑)。

あれにお金絡めたら脳みそちぎれるぐらいおもろい

友保 俺は……何にもいわれへんかった。いろんな常連のおっちゃんの顔が頭に浮かんで。

小林 外国の人からみたらもちろん換金できると思うよな。

友保 「メダルバンク」みたいな、登録したらメダル預けられるんですよ。一応外人さんも登録だけする、もったいないから。なんとなく英語も雰囲気OKOKみたいな感じでやったんですけど、一人だけノーイングリッシュみたいな人おって。「どこの国?」って聞いたらパスポート見せてくれたんですけどアラビア語やってん。マジ何もできなかった。1ミリも紐解かれんかった。そもそもどっちから読んだらええねん。
 

——それは紐解かれない。

友保 あと、中国人のおじいちゃんとおばあちゃんが来て、「你好(ニーハオ)」っていわれたときは「あ、リアル你好」ってめちゃくちゃテンション上がりましたね。

——ゲーセンって日本特有の文化なんでしょうか。

友保 いやアメリカにもあるんじゃないですか。ターミネーター2で見ましたよ。なんかバスケのやつとかあるじゃないですか。ぬいぐるみもらえる。

——アメリカだと換金できるのかな。

友保 景品なんじゃないすか。あんなんお金絡めたら脳みそちぎれるぐらいおもろいんですけどね、メダルゲームなんか。

——それは……一平さんが証明してますね。

友保 一平ちゃんブっこんでるもんな(笑)。大王製紙の人もね。

小林 ギャンブルといえば(笑)。今ご意見番みたいになってる。
 

——話変わりますけど、ゴールデンウィーク中は劇場にくるお客さんの層も変わりますか?

友保 ああ、どうなんやろ。すべて等しく客なんですけど。重いか、軽いか。もっというと賢いか、アホか。もっというと、いいか、クソか。まず客のせいにするからな(笑)。
 

——今日は(ルミネの)トップバッターだったじゃないですか。朝だとあまり笑ってくれないとかありますか。

小林 たぶんこっちの問題じゃないですかね。お客さんは起きてるんですよ。こっちが寝てるんです。

今年のゴールデンウィークの密かな楽しみ


——あ、たしかに最初のほうちょっとむにゃむにゃしてました(笑)。ゴールデンウィークだと親子連れや学生さんが増えるとかあるのかなぁと。

友保 学生さんってお笑い見にくるんですかね。中高女子はきてるイメージだけど、男子こんよな。

小林 おらん。お笑いに金払わん。どの業界もじゃない?

友保 遊んでたもんな、ゴールデンウィークなんか。それこそゲームしたりとか行ったことないとこ行くとか。夜通しチャリでどっか行ったりするな。

小林 するな。お笑いには行かんな。

友保 みんながどっかの家泊まるんをぐるぐる回して、全員「あいつんちに泊まるから」「あいつんち泊まるから」いうて、誰んちにも行かずにみんなで集まってチャリでどっか行く。

——青春ですね。

友保 俺、気ぃきかして全員にカリカリ梅配って「梅食おうぜ」っていったら、全員梅食われんかった(笑)。いっぱい梅持ってって強烈恥ずかしい。

——エネマグラ、かりかり梅……友保さん独特のプレゼントセンス。

友保 だってうまいじゃないですか、カリカリ梅。全員バカなガキだったんですよ。みんないい高校行ったけど(笑)。

——でも、あんまり楽しく遊びすぎてると、そこから学校や仕事に行くのがいやになってしまいますよね。世にいう五月病。お二人は今のところお仕事忙しいので大丈夫そうですが。

友保 そりゃ10日も休めばね、仕事行きたくないもんな。俺は1日休んだだけでそうなりますよ。まだ思うもんな「昨日に戻れ」って。昨日の今頃飲んでたもんな〜楽しかったな〜て。

小林 ああ明日から仕事や……と。
 

友保 ゴールデンウィーク一個いいのは、サザエさんがゴールデンウィーク回なんねん。待ってました、と。磯野家は長期休みちゃんと浮かれんのよ、海行ったりするからね。そんで疲れて帰ってきて店屋もん頼んだりする。それあったわ。やっぱええですね、ゴールデンウィーク(笑)。

取材・文/西澤千央 撮影/高木陽春