東京ディズニーリゾートはもはや“夢の国”ではないのかもしれない。6月6日に東京ディズニーシーで、新エリア「ファンタジースプリングス」がオープンしたが、これを皮切りにSNS上では、ディズニーリゾートへの不満を爆発させるような投稿が目立っている。

アトラクションに早く乗るだけで追加料金1万円!?

騒動の発端となったのは、小さな子どもが新エリアに入れず、茫然と立ちつくしているテレビのニュース映像のワンシーンを切り取ったキャプチャ画面。これがSNS上で拡散されると、意見は真っ二つに割れた。

シンプルに「子どもがかわいそう」という意見と、「しっかりと下調べしてこない親が悪い」という意見だ。新エリアに入るには朝から行列に並んだりすることが必要不可欠で、それを怠った大人を責める声が、ディズニー“ガチ勢”から相次いでいるのだ。

そしてそうした声が増えるのに比例して、ガチ勢しか楽しむことができなくなっている今の東京ディズニーリゾートはどうなのかと批判する声も増え、もはや収拾がつかなくなっている。どうやら、ディズニーリゾートにしばらく行っていない人にはわからないが、今のディズニーリゾートは昔のように、家族連れでふらっと訪れて楽しむことができる場所ではなくなっているようだ。

年に1〜2回はディズニーリゾートに行くというディズニー好きで、2人の子どもを持つ30代の女性・Aさんから話を聞くと、変わり果ててしまったディズニーの現状が見えてきた。

「まず、昔はチケットと無料のファストパスのみで、+αの料金はかからず、チケット代も5000〜6000円程度のイメージでした。チケット代+飲食代+お土産代を合わせても大人一人で1日に1万円ちょっとで、十分楽しめるテーマパークだったと思います。でも今は、チケット代7900〜10900円(価格変動制)に加え、有料のディズニー・プレミアアクセス(DPA)、無料のプライオリティパス、スタンバイパス、エントリー受付を使って、人気アトラクションを楽しむシステムになっています。まずこの時点で、ふだん行かない人からすれば難解なのではないでしょうか」(Aさん)

待ち時間を短縮できるDPAは、アトラクション毎に1人につき1500円から2500円する。4人家族であれば、1アトラクションに乗るだけで1万円だ。黙って数時間の待ち時間に耐えるか、お金を払って時間を買うかの選択に迫られるのだ。

ガチ勢が支配するディズニーランド

このDPAのシステムは、2022年5月19日から導入された。当初の対象施設は、東京ディズニーランドの「美女と野獣“魔法のものがたり”」、東京ディズニーシーの「ソアリン:ファンタスティック・フライト」の2つだけであったが、今ではパレードやショーも含めると、DPAの対象は10個以上になっている。

DPAの導入はもちろん賛否があったが、今ではこのDPAすらもすぐに売り切れになるような状態に。たとえ平日のド真ん中でも、人気アトラクションの「アナとエルサのフローズンジャーニー」は、開演から数分でDPAが売り切れになっていた。そのため、中には「DPAをもっと値上げするべきだ!」という声まであがっている。

「本来こういったレジャー施設は子どもがターゲット層だと思うのですが、家族で存分に楽しもうとすると、海外旅行並みの金額になってしまううえ、子どもには理解不能なシステムばかり。そのため、今では大人だけが楽しむ場になりつつあると感じています。DPAの発売のほかにも、日本のディズニーだけがコロナ禍以降も年パスを復活させないなど、収益優先にしているのが露骨になってきていて、なんだか残念です」(Aさん)

こうして“存分に遊ぶにはお金をたくさん出すしかない、しかしお金を出したとしても遊びきれる保証はない”…という状態となり、いつしかディズニーリゾートは“ガチ勢”たちの情報戦にまで発展。子どもはもちろん、ライト層すらも踏み入れられない領域となってしまった。

「期間限定のショーやアトラクション、最新のエリアを楽しみたい場合はガチ勢との戦いになるのですが、これが普通の人ではもはや太刀打ち不可能。まして、子連れでは論外です。例えばガチ勢は、シンデレラ城前のショーは、前日からランドへ続く歩道橋の階段から並んだり、入場のためだけにディズニー内のホテルをとって、ホテルでは寝ないでおもてに並ぶとかをしていますから……。そもそも前日から並ぶのはルール違反なのですが、公式は黙認状態です」

「共産圏のような風貌をした資本主義帝国」

アトラクションやショーだけでなく、グッズを買うのも一苦労。新エリアや新発売のグッズは初日で売り切れ、入荷未定になるものが多く、グッズがどうしても欲しい人は初日に頑張らないと手に入れることはできないという。

「システムの複雑化や事前準備の大変さなども目立って、今のディズニーは、とても家族連れで気楽に楽しむ施設ではなくなっています。先日2歳の長女を連れて行ったところ、低年齢向けの幼児食が食べられる場所がディズニーにはまったくなく、ブッフェをなんとか予約して昼食にありつけましたが、こうしたところも子ども向けではないんだなと思ってしまいましたね。

アトラクション目当てではなく、雰囲気を楽しめばいいといった意見もありますが、それにしては高い入場料です。チケットはあくまで、アトラクション込みですからね。今のディズニーのシステムや料金を考えると、行く前から疲れてしまうな、というのが正直なところ。それでもディズニーはまだ好きなので、ライトな層ももっと楽しめるようなテーマパークになって、本来の夢の国に戻ってほしいです!」(Aさん)

SNS上では現在のディズニーリゾートに対して、〈ディズニーが夢の国から修羅の国になった〉〈もう素人子連れファミリーでディズニーは無理なん……?〉〈昔はファミリーで気軽に入れたラーメン屋が、今や二郎系みたいになっちゃった感じ〉〈今の東京ディズニーは一見、共産圏のような風貌をした資本主義帝国だと思っている〉といった声があがっている。

ディズニーは夢ではなく、シビアな現実を見に行く場所となってしまったのだろうか……。

取材・文/集英社オンライン編集部