攻守の重要局面となる「バイタルエリア」で輝く選手たちのサッカー観に迫る連載インタビューシリーズ「バイタルエリアの仕事人」。第39回は、サンフレッチェ広島のFW大橋祐紀だ。

 前編では、広島への移籍を決断した理由やJ1開幕戦での新スタジアム第1号ゴールの意味などを語ってもらった。後編となる本稿ではまず、バイタルエリアを攻略するうえで意識していることを訊いた。

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 試合中は集中していて、何かを考えながらプレーしているというよりは、感覚的な部分も多いですが、一番大事なのは、周りを見ることです。相手の位置だけではなく、味方のポジショニングも見て、状況判断することを意識しています。

 それは普段のトレーニングでも心掛けていて、練習を重ねていると選手それぞれの特長が分かってきます。お互いがプレーしやすい位置を見ながら、たとえば「このタイミングでパスが出てくるな」とか、「こういう時にチャンスが作れているな」というように、味方との連係を合わせていく感じです。チームの勝利を大前提に、練習でやっていることを出せればと考えています。

 自分は能力が突出している選手ではありません。それでもハードワークできるところ、飛び抜けていない分、いろんなことを考えて、模索しながらやり続けられるところは強みだと思っています。
 
 理想のストライカー像を言葉にするのは難しいですが、ルイス・スアレス選手やロベルト・レバンドフスキ選手、クリスティアーノ・ロナウド選手など凄いなと思う選手たちはいます。彼らの一つひとつのプレーの質の高さには驚かされています。

 それで言えば、広島の選手たちもみんな個々の能力が高いなと感じますね。一緒にやっていて(荒木)隼人、(佐々木)翔君、シオ君(塩谷司)とかは対人が強く、カバー範囲も広くて、頭抜けているものがあると思います。攻撃面でも後ろの選手たちは、みんなが縦パスを差し込めるので本当に凄い。

 ベルマーレ時代に対戦した際に彼ら3人は、特にやりづらさがありました。駆け引きが上手で、とても嫌だった印象があります。対人能力に長けているので、同数でも守れるのは強みですよね。

 他にも(川村)拓夢やマコ(満田誠)、(松本)泰志なんかは、攻撃はもちろんですが守備でも相手を潰せて、(加藤)陸次樹はテクニックがあって器用な選手です。

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 大橋は大学時代、中央大で4年次に関東大学サッカーリーグ2部で21ゴールをマーク。歴代最多ゴール記録を更新して得点王に輝き、チームの優勝、1部復帰にも貢献した。

 中央大学では2つ上に、現在、セルティックで活躍する古橋亨梧がいて、同期の渡辺剛(ヘント)や上島拓巳(横浜F・マリノス)などからは大きな刺激を受けていたという。

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 大学時代に多くのゴールを決められたのは、自分が優れていたというよりは、ただ単にチームが強かっただけです。シュートチャンスがたくさんありましたし、本当にチームのおかげです。関東2部というのもありましたし、チームメイトたち一人ひとりが圧倒的だったのが一番の要因かなと思っています。

 当時のチームメイトはほとんどの選手がプロになっていますし、自分がプロになれたのも彼らに助けられて、運が良かったのかなと思います。
 
 古橋選手は当時から見ていて凄いなと感じていましたし、同期には渡辺や上島、安在達弥(アスルクラロ沼津)などがいて、みんなそれぞれ個性がある選手たちでした。トレーニングはもちろん全力でやりつつ、プラスアルファでそれぞれの課題にも真摯に取り組んでいました。ストイックな選手ばかりなので、自分もやらなきゃなという気持ちにさせられました。

 彼らとは寮でともに生活していましたし、そういう環境で過ごせたのは、サッカー選手としてだけではなく、一人の人間としても成長できたと振り返れば思いますね。

 古橋選手や渡辺は海外で活躍していますが、彼ら2人だけでなく、同期はもちろん、陸次樹や大久保智昭(浦和レッズ)ら後輩の活躍も、チームはどこであれ刺激になります。彼らが活躍するたびに自分も頑張らないとなと思います。
 
  ベルマーレ時代から変わらないというオフの日の過ごし方や、プライベートについても教えてもらった。そして最後に今後の目標や、思い描くビジョンを力強く示してくれた。

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 オフの日は、今は家でゆっくりしていることが多いですかね。YouTubeを見たりもしていますが、基本的にはたくさん寝ていますね。寝れる時にいっぱい寝ておこうという感じです(笑)。試合の翌日は休みになることが多いので、身体を休めて回復に充てています。それはベルマーレ時代からずっと変わらないですね。

 広島はありがたいことに、オフの日でもトレーナーさんたちが治療してくれる場所があって、すごく配慮してもらっています。疲労を残さずにコンディションを整えて、次の試合に向かうというのが毎週のルーティンですね。

 広島の観光名所などにはまだ行けていないので、シーズン中のブレイクやオフシーズンにはいろんなところを周ってみたいですね。せっかく初めての土地に来ているので、ゆくゆくはオフの日を充実できればいいなと思っています。

 でも5月は連戦もありますし、試合がたくさんあるので、乗り切るために、まずはそこに向き合っています。
 
 これといった趣味は特にないですが、ベルマーレ時代にはよくチームメイトとカフェに行っていました。広島も良い場所ですが、湘南も海があったり良いところなので、リラックスできていました。

 目標は入団会見でも話しましたが、まずはシーズン二桁得点です。一年一年が勝負だと思っているので、まずはそれを達成したいです。

 日本代表も、もちろん意識しています。拓夢や(大迫)敬介が入っていますし、刺激のあるクラブでプレーできているので、自分も目ざすべき場所だと思いますし、ひたむきに努力してチャンスを得られるように頑張りたいです。

 将来的には海外でもプレーしたいという思いもありますが、まだまだそれを言える立場ではないので、今は広島で1試合1試合、結果を残していくのがすべてです。

※このシリーズ了

取材・構成●中川翼(サッカーダイジェストWeb編集部)

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