移籍マーケットにおける今夏最大の注目プレーヤーは、パリ・サンジェルマンのフランス代表FWキリアン・エムバペだ。確実視されているレアル・マドリーへの移籍は、いつ正式に発表されるのか。一方で、移籍市場の裏側で影響力、存在感を強めているスカウトやスポーツディレクター、クラブ幹部も存在する。

 今回紹介するのは、移籍マーケットの専門記者であるジャンルカ・ディ・マルツィオがピックアップしたローマのギリシャ人CEOだ。母国のオリンピアコスで頭角を現わし、イタリアの名門にやってきた辣腕のなにがどう優れているのか。ディ・マルツィオ記者が解説する。【ワールドサッカーダイジェスト4月4日号より転載】

■リナ・スルーク(ローマCEO)
生年月日/1983年10月11日(40歳)
国籍/ギリシャ プロ選手経験/なし

 2023年4月にローマのCEOに就任したギリシャ人で、それからの1年でダン・フリードキン会長の信頼を勝ち取り、クラブ内で実権を確立したやり手のギリシャ人。女性のエグゼクティブが欧州のトップクラブでこれだけ重要な地位と権限を手にしたのは、ロマン・アブラモビッチ時代のチェルシーにおけるマリーナ・グラノフスカヤ以来のことであり、その点だけでも十分注目に値する。
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 CEO就任当初はそれほどの権限を持っていなかったが、徐々にクラブ内に影響力を広げ、ゼネラルディレクターだったティアゴ・ピント、フリードキン会長が全幅の信頼を寄せていた英国人秘書のダニエレ・シルベスターの2名を追い出す形で、クラブの全権を掌握した。両者と近かったスタッフも次々に離職している。

 元々は法務畑の出身で、母国ギリシャのオリンピアコスで法務部門責任者からゼネラルマネジャーに昇格した18年から4年間にわたって経営の実権を握り、同時にECA(欧州クラブ連合)でも要職に就いて、欧州サッカー界のVIPたちとの人脈を構築した。

 現時点で空席となっているローマの強化責任者に誰を招聘するか、そして監督人事(現監督であるダニエレ・デ・ロッシとの契約は今夏まで)を含めて、ローマのこれからをどのように舵取りするか、移籍マーケットの中でローマがどのような影響力を持つかに注目している(編集部・注/その後、ローマはデ・ロッシ監督の来シーズン続投を発表した)。

文●ジャンルカ・ディ・マルツィオ(スカイ・イタリア)
翻訳●片野道郎