シャビ・アロンソ監督が率いるレバークーゼンはヨーロッパリーグ(EL)決勝で敗れるまで公式戦51試合で無敗記録を続け、大躍進を遂げた。

 その攻撃力は目覚ましい。どんどんパスを入れ、相手を動かしながら、スペースを作り出す。長短のコンビネーションも使ったかと思うと、一人のドリブルで切り裂いてゴールに迫る。変幻自在の攻撃は圧巻だ。

 徹底した攻撃サッカーは、最後の10分で最大限の効力を生み出す。たとえリードされていても攻め続け、痛快な逆転劇を繰り返している。ELの準々決勝ウェストハム戦、準決勝のローマ戦と典型的だった。

 フロリアン・ヴィルツは、そのスタイルのサッカーの寵児と言えるだろう。ギャップを取ってボールを呼び込み、そこからアドバンテージを持って攻めかかる。たくさんのアイデアを無限の選択肢の中で実現できるのだ。

 しかしレバークーゼンは、何も攻撃だけのチームではない。

守備に関しては、むしろ原点に返っている。

「相手に自由を与えない」

 そこが徹底されている。
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 顕著に見えるのが、ペナルティエリア内の守備である。

 モダンサッカーでは、ゾーンディフェンスが主流となっている。それはペナルティエリア内でも適用され、スペースを分割し、人がそこに立ってそれぞれ担当するのが、一つの定石だろう。それはマンマーキングにおけるミスマッチの可能性を減らし、集団的な戦い方での効率を上げるためであって、理にはかなっているのだが…。

 実際のところ、ペナルティエリアをゾーンで守ると、相手に寄せきれない。相手チームもゾーンに慣れ、どこをどうすれば綻びができるのか。それを狙ったサインプレーも仕掛けてくる。寄せきれずに叩き込まれる、という悪例が増えてきた。

「ペナルティエリアにゾーンは存在しない」

 スペインでは、その教訓がある。たとえゾーンを担当するとしても、そこに入ってきた選手を完全に捕まえる役目が課される。さもなければ、相手に自由も与えてしまった、も同然だからだ。

 スペイン人のシャビ・アロンソ監督は、その原理を誰よりも分かっているのだろう。特にクロスに入ってくる選手は必ず捕まえる。ゾーンに頼り切るなど、相手の思う壺である。そこは1対1で負けてしまうリスクはあっても、極力、思うようにシュートを打たせなかったら、「GKがそこに立ちはだかれる」という考え方なのだろう。

 それ故、対人のところではパワーや高さのある選手が、バックラインには並んでいる。アロンソ監督率いるレバークーゼンが「最強」の呼び声が高いのは、攻撃サッカーの脆さがないからだろう。守りにおいて、サッカーの原点的な強さが貫かれているからだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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