JR東日本は8日、走行列車の回生電力エネルギーの有効活用に向けた施策を発表した。

 現代の電車では、走行用モーターを活用し、運動エネルギーを電気エネルギーに変換することでブレーキを掛ける「回生ブレーキ」を搭載している。発電した電気は、架線に流すことで付近を走行している電車に供給できるため、消費エネルギーの削減につながっている。一方、付近に電気を消費する電車が存在しない場合には、架線の電圧が上昇する。最悪の場合には設備故障につながるため、車両には、架線電圧が一定値に達した場合、回生ブレーキの力を絞り込む機能が車両に搭載されている。しかしこれは、本来は他の列車で利用できるエネルギーが、有効利用できていない状況ともなっている。

 同社では、変電所から供給する基準の電圧「き電電圧」を低減することで、回生ブレーキの絞り込みが発生しにくい状況を作り、回生電力の有効活用につなげる検討を進めてきた。しかし、通常時からき電電圧を低減した場合には、回生ブレーキの動作中以外では、当該区間を走る列車の加速性能が低下し、ダイヤへ影響を及ぼすおそれがあった。同社は今回、車両データなどにより回生電力の抑制がかかりやすい区間を把握することにより、列車運行ダイヤに影響を与えない範囲で、き電電圧を抑制することを可能としたとしている。

 き電電圧の抑制は、列車本数が比較的少ない横浜線の小机〜八王子間で、実証実験を実施。その後、2023年6月に本運用を開始している。また、横浜線と状況が近い埼京線でも、2023年10月から実証実験を実施。2024年6月には、南武線でも実証実験を開始する。

 使用電力量が多い区間については、2024年5月に、横須賀線西大井〜新川崎間で、長期的な実証実験を開始する。同区間での本施策の実施により、エネルギー使用量では3パーセント程度、CO2換算では年間約300トンの削減効果が期待できるという。

 同社は今後、き電電圧低減による回生電力有効利用について、首都圏線区を中心に拡大を検討。さらに、時間帯別のき電電圧調整による有効活用や、走行する列車本数に応じて自動でき電電圧を調整できる変電所設備の導入なども検討すると説明。これらの取り組みを通じ、ゼロカーボン・チャレンジへの貢献や、エネルギーコストの抑制につなげていくとしている。