間もなく本戦の開幕を迎える今季2つ目のテニス四大大会「全仏オープン」(5月26日〜6月9日/フランス・パリ/クレー)は、現地5月22日に男子シングルス予選2回戦が行なわれ、今季限りでの現役引退を表明している元世界ランク3位のドミニク・ティーム(オーストリア/現131位)が登場。オットー・ビルタネン(ポーランド/同156位)に2-6、5-7で敗れ、残念ながら本戦への切符をつかむことはできなかった。

 2度の準優勝を経験している全仏でのラストダンスは悲しい結末となってしまった。フランコ・アガメノーネ(イタリア/228位)との予選1回戦を3-6、6-3、6-2の逆転で突破したティーム。しかし2回戦では序盤から22歳のビルタネンに主導権を握られ、3度ものブレークを喫して第1セットを落としてしまう。

 第2セットは一転、終盤まで互いにブレークを1つずつ取り合う緊迫の展開となるも、5-6で迎えた第12ゲームでティームが痛恨のサービスダウンを喫し、1時間43分で勝負あり。これにて最後の全仏を終えることとなった。
  試合後には全仏で輝かしい功績を残したティームを称える形で特別セレモニーを挙行。トーナメントディレクターのアメリー・モーレスモ氏(フランス/女子元1位)から記念トロフィーを受け取った30歳の名手は、ローランギャロスでの思い出を振り返りながら心からの感謝の言葉を口にした。

「1回戦と今日の試合で素晴らしい雰囲気を作ってくれてありがとう。たくさんの思い出があるこの満員のスタジアムで、皆さんの前でプレーすることができて、素晴らしいお別れになりました。ここに来てくれた皆さん、そして私を温かくサポートしてくれた皆さんに感謝しています」

「この大会とは特別な絆で結ばれています。ジュニアの決勝にも進出し、以降は少しずつ大会やファンと素晴らしい関係を築いてきました。このコートでは多くの良い思い出と経験が手にできました。僕にとっては最高の結果が得られたグランドスラムでした」
  また25年の母国の大会での引退を発表し、今大会の予選に出場していた元世界8位のディエゴ・シュワルツマン(アルゼンチン/141位)についても、残念なニュースをお伝えしなければならない。

 1回戦ではルーカス・ノイマイアー(オーストリア/212位)に6-3、6-2で快勝したシュワルツマンだったが、2回戦では3時間超の大激戦の末に地元勢のカンタン・ハリス(フランス/187位)に6-4、4-6、6-7 (7)の逆転で惜敗。ティーム同様最後の全仏をメインドローでプレーすることは叶わなかった。

 20年に全仏4強進出を果たした“小さな巨人”は、試合後の特別インタビューで涙ながらに次のようなメッセージを残した。
 「私にとってローランギャロスはとても特別な大会です。フランス人選手と対戦するのは簡単ではありませんでしたが、今日はまるでホームグラウンドにいるかのような感覚でした。この瞬間を忘れることはないでしょう」

 キャリアを通じて全仏で強烈なインパクトを残してきたティームとシュワルツマン。それゆえに本戦の舞台でもう彼らのプレーが見られないのは非常に寂しい限りだ。引退までは残り少ないが、キャリアに別れを告げるその日までは、限られた機会の中で存分にプレーを楽しんでほしい。

文●中村光佑

【動画】全仏予選2回戦、ティームの最後のポイントと、シュワルツマンがコートを去る様子

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