6月12日(日本時間13日、日付は以下同)にテキサス州ダラスのアメリカンエアラインズ・センターで行なわれたNBAファイナル第3戦。ボストン・セルティックスはダラス・マーベリックスの猛追を振り切り、106−99で下してシリーズ3連勝を飾り、フランチャイズ史上18度目のリーグ制覇に王手をかけた。

 セルティックスはジェイソン・テイタムが31得点、6リバウンド、5アシスト、ジェイレン・ブラウンが30得点、8リバウンド、8アシスト、デリック・ホワイトが16得点、5リバウンド、4アシスト、2ブロックをマーク。

 2桁得点はこの3選手のみながら、ほか3選手が8得点以上をあげて援護射撃し、プレーオフで圧巻の10連勝を達成した。5月9日のクリーブランド・キャバリアーズとのカンファレンス・セミファイナル第2戦に敗れてからというもの、1か月以上も黒星を喫していない。

 そうしたなか、フィラデルフィア・76ersのジョエル・エンビードが、自身の公式Xで「バックスは彼らにチャンピオンシップを与えてしまったってことか?」と投稿。5時間足らずで4万6000もの「いいね!」がつき、表示回数は633万回超えと注目を集めている。
  これは昨季までミルウォーキー・バックスで3シーズンプレーし、2021年の優勝に大きく貢献したドリュー・ホリデーが、今季から競合のセルティックスへ移籍して活躍していることを揶揄したもの。

 昨年9月27日、バックスは3チーム間トレードでポートランド・トレイルブレイザーズからデイミアン・リラードを獲得したが、その見返りにホリデー、グレイソン・アレン(現フェニックス・サンズ)、複数のドラフト指名権を放出していた。

 ホリデーは10月1日に成立した新たなトレードにより、マルコム・ブログドン、ロバート・ウィリアムズ三世、複数のドラフト指名権との交換でセルティックスへ移籍したため、最終的にバックスからライバルチームへ移ることとなった。

 ファイナルの3試合を終えた時点で、ホリデーはテイタム、ブラウンに次ぐチーム3位の平均39.0分プレーし、15.7点、7.7リバウンド、4.3アシスト、1.0スティールにフィールドゴール成功率59.4%、3ポイント成功率41.7%を記録。

 とりわけ第2戦はフィールドゴール成功率78.6%(11/14)で26得点、11リバウンドの大活躍で勝利に貢献。第3戦では9得点、4リバウンド、5アシストにとどまったものの、試合時間残り2分48秒にペイントアタックからリードを6点に広げるホワイトの長距離砲をアシストしており、“ファイナルMVP候補”の1人となっている。 一方、ホリデーを放出した今季のバックスは、大黒柱のヤニス・アデトクンボがケガでプレーオフを全休。頼みのリラードもシリーズ中のケガで欠場を余儀なくされ、結果としてインディアナ・ペイサーズに2勝4敗で敗れてファーストラウンドで姿を消しているのだから、皮肉な結果になったと言わざるを得ない。

 第3戦後に『NBA TV』の番組に出演したテイタムは「どうやって彼を獲得できたのかわからないけど、このチームにドリューがいてくれてハッピーだし、すごく幸運さ」と切り出し、ホリデーのことを絶賛した。
 「なんといっても彼は勝利へつながるプレーを決めてくれる。もちろん、この舞台(ファイナル)を経験し、チャンピオンシップを勝ち獲ったこともある。何よりも、彼はディフェンス面でみんなのレベルを引き上げたんだ。僕らはディフェンスにプライドを持っている。それを作り出したのがドリュー・ホリデーなんだ。僕らは彼のレベルへ到達しようと努めているんだ」

 今季のセルティックスからはホリデーとホワイトの2人がオールディフェンシブ2ndチームに選出。チームのディフェンシブ・レーティングはレギュラーシーズンでリーグ2位の110.6、プレーオフでも出場16チーム中3位の107.6という好数値を叩き出している。

 テイタムが語ったように、ホリデーがディフェンス面で重要な存在となっていることは間違いない。14日(日本時間15日)の第4戦で、セルティックスがスウィープで決着をつけることができるか注目していきたい。

文●秋山裕之(フリーライター)