リニア中央新幹線のトンネル掘削工事がすすむ岐阜県瑞浪市で、大湫宿付近の井戸などの水位が低下した問題を受け、JR東海は5月16日、工事を一時中断することを明らかにしました。この問題で、他の町にも波紋が広がっています。  岐阜県瑞浪市の山中にある中山道の宿場町・大湫宿(おおくてじゅく)では、2024年2月中旬から、周辺の井戸やため池の水位が相次いで低下しました。なかには、枯渇した井戸もありました。

瑞浪市大湫町民: 「自然を壊してしまったということやね。もとに戻してほしいというのが一番の気持ち」  原因についてJR東海は16日、大湫宿周辺で起きた水位の低下はリニアのトンネル工事の影響の可能性が高いと認めたうえで、工事を一時中断しました。

JR東海の丹羽俊介社長: 「本工事以外に地下水に影響するような工事が行われていないことから、本工事による影響の可能性が高いと考えているところでございます。トンネル掘削工事をいったん止めて、また代替となる水源といたしまして、新しい井戸を数日以内に掘り始める予定でございます」

 この問題の波紋が、大湫宿から西に15キロほど離れた岐阜県御嵩町(みたけちょう)にも広がっています。  御嵩町長は16日、JR東海の丹羽社長にあてた申し入れ書で、「貴社との今後の協議につきましては、上記の内容が明確になるまで、一時停止させていただくことを合わせて申し入れます」と伝えました。

 御嵩町がJR東海との交渉を中断したのは、「リニア・トンネル建設の残土の恒久処分の受け入れ」です。  全体の9割近くを地下で走行するリニア中央新幹線では、5680万立方メートルの残土が発生する見通しです。リニアのルート上にある御嵩町内では、23ヘクタールの土地に68万立方メートルの残土を受け入れることについて、JR東海と協議していく予定でした。

御嵩町役場企画部の田中克典部長: 「御嵩町も瑞浪市さんと同じように、井戸水とか農業用水を使ってみえる方がいらっしゃいます。そういった方たちの不安が高まっていると考えられますので、御嵩町としましてはいったん住民の皆さんの不安を払拭した上で、丁寧に協議を進めるべきだという判断をしまして、協議の一時停止をJR東海に申し入れたということでございます」

 御嵩町内では元々、環境が悪化することを懸念する声が挙がっていたものの、5月10日、町長が有害な重金属が含まれる土以外の受け入れについて、協議を始めることを明らかにしたばかりでした。  そんな中に発覚した水位低下問題で、地元住民にも不安が広がっています。 御嵩町民の男性: 「環境だけはしっかりしてもらわんと。うちも井戸水使ってますけども」

 地下65メートルの井戸水をくみ上げて、普段の日常生活で使っている男性は、リニアの開通には期待する一方で、普段口にする水に影響が出ないか懸念し、「環境が大事」と訴えました。 御嵩町民の男性: 「決して反対しているわけじゃないんですけども、やっぱり人が住んでいますからね、環境が大事ですから、それさえ守ってもらえれば」  JR東海は御嵩町の申し入れに対し、「いただいた文書の内容を踏まえて真摯に対応し、瑞浪市の水位低下については事実関係や対策について丁寧に説明していく」とのコメントを発表しています。