NHKマイルカップ2024

[GⅠNHKマイルカップ=2024年5月5日(日曜)3歳、東京競馬場・芝1600メートル]

【トレセン秘話】牡馬、牝馬のクラシック第1弾である皐月賞、桜花賞が終了し、そこで上位に好走した馬が参戦を表明したことで主力を形成するであろう今年のNHKマイルC。マイル路線を歩んできた馬たちも簡単には譲らない構えを見せているだけに、例年以上にハイレベルな戦いとなることが予想される。

 となれば前哨戦のニュージーランドトロフィーで16着のしんがり負けを喫したキャプテンシーでは、とても勝負にならないという見方が大勢となるのも致し方ないところ。しかし大敗を喫した後だからこそ、開き直った勝負に出られることもある。調整パターンから大きく見直して挑む陣営の抱く秘策とは…。

「前走は出遅れてしまったことで他馬とも接触。そこからはずっと力んだ走りとなってしまったことで、直線ではやめてしまっている感じというか、脚も残っていませんでした。力負けというより、自身の力を全く出せなかったという結果だったと思います」と振り返るのは松永幹調教師。デビューから2着を3戦続け、4戦目での初勝利からの連勝はともに逃げ切り勝ち。ジュニアCの勝ち時計=1分32秒5(良)が優秀だったので重賞でも2番人気の支持を集めたのだが、その期待を大きく裏切る結果にショックがあったことを師は隠さない。

 デビュー時には背が低く幅のない馬体を懸念し、もう少し馬体に厚みが欲しいと望んでいた馬が、前走時は休養を経て実が入り、調教でもバランス良く走れるようになったとのコメント。しかし大敗の結果を受けて実は馬体に余裕があったのではないかとみるや、この中間からはプール併用で負荷を強める調整を行っている。さらには上達して心配がなくなったとみていたゲート練習もジョッキー騎乗で再開。練習ではおとなしく駐立できることの確認にも怠りはない。

「もともとゲートの駐立があまり上手な方ではなかったんですよね。レース当日にテンションが上がってしまうところも返し馬や馬具などを工夫することで一つずつクリアして、出遅れる心配はなくなり、ハナにこだわらない競馬もできるようになっているとみていたんですが、前走では全てが悪い方に出てしまいました。さらにはパワーをつけて多少の荒れ馬場ならこなせるとみていたところも、実際には道悪で走りづらそうにしていたようでしたから」

 こう話す師はこれまで積み上げてきたものを一度リセットする必要性を示唆し、改めてGⅠへと挑む意欲をのぞかせた。

「これまで勝った2走はともにスタートを決めての逃げ切り。自分のペースでなら速い時計でもしっかりと走り切るんですから、スタートさえ決まれば先手を取りに行ってもいいと考えています。あとはできれば良馬場で。そんなに全てがうまくいくほど甘くはないでしょうけど、とにかく自分の実力を発揮できるようなレースをしてほしいですからね」

 ノーマークとなった逃げ馬が波乱を起こすのは競馬によく見られるところ。失うもののなくなったキャプテンシーが積極果敢に逃げの手に出れば…。展開のカギを握る存在となることは間違いなさそうだ。

負荷を強められているキャプテンシー
負荷を強められているキャプテンシー

著者:石川 吉行