2013年のダービーを制したキズナ&武豊と田重田厩務員(当時)=写真提供・平松さとし氏
2013年のダービーを制したキズナ&武豊と田重田厩務員(当時)=写真提供・平松さとし氏

 2013年のGⅠ日本ダービー。佐々木晶三厩舎で当時、厩務員をしていたのが田重田静男さん。管理するキズナとともに、クラシック最大の一番に臨むことになった。

 1955年生まれの田重田さんは少年時代、実家の近くに牧場があったことから競馬に興味を持つようになった。トレセン入りしてからすぐ隣の厩舎に入ってきた見習い騎手が後の佐々木晶三調教師。仲良くなると、佐々木調教師の開業後にはその下で働くようになった。

「担当させてもらったアーネストリーで初めてGⅠを勝つことができました」

 12年に出会ったのがキズナだった。翌13年のGⅡ弥生賞で5着に敗れ、GⅠ皐月賞への道が断たれたが、新たに目標をダービーに切り替えると、GⅢ毎日杯、GⅡ京都新聞杯を連勝した。

「ここで武豊さんがキズナの持ち味を発揮できる何かをつかんだようです」

 ダービーの本馬場へ向かう時には「ゲート裏まで行きましょうか?」と鞍上に声をかけた。すると、天才ジョッキーから思わぬ返事が返ってきた。

「来ないで大丈夫です。直線では抜け出すので、一番見やすいところで見ていてください」

 レースは後方からになり途中、進路が狭まるシーンもあった。しかし、田重田厩務員は余裕を持って見ていたと述懐した。

「レース前の武豊さんのひと言で、相当自信があると分かったので、ハラハラすることなく観戦できました」

 結果は皆さんご存じの通り。鞍上の思惑通りキズナは先頭でゴールイン。武豊騎手は自身5度目のダービー制覇の偉業を達成。その後、22年にはドウデュースでも優勝し、前人未到のダービー6勝という金字塔を打ち立てた。そんなレジェンドが今年はシュガークン(牡・清水久)と7度目の制覇に挑む。今週末、スタートが切られるGⅠ第91回日本ダービーに注目したい。(平松さとし)

著者:東スポ競馬編集部