どのような目標であっても、具体的な行動が伴わないと意味がない。しかし、日々あれこれと多忙にかまけて、何をいつやったらいいかが、よくわからないうちに、気がついたときには手遅れになっている。

先ほど述べた「仮説」と「知識」の割合は、時間軸によって大きく変化する。目の前の業務はわかっていることが多いので「知識」の割合が高く、中長期の業務はわかっていることが少ないので「仮説」の割合が高くなる。「知識」の割合が高い業務のほうが、具体的な行動につながりやすいから、中長期の業務は先送りされやすいのである。

2030年に達成しなければならない中長期の財務目標に対して、今すぐに取り組むべきことは、仮説を明確にすることである。放っておけば手遅れになることを、私たちはもうわかっている。

このような中長期の取り組みに対して、アマゾンの創業者のジェフ・ベゾスはこう語っている。

「私は、2〜3年の時間軸ではなく、5〜7年の時間軸で考えるように、すべての人に指示している」

「これは、人間にとって自然なことではない。これはあなたが徹底しなければならない規律である」

中長期の目標達成には、財務目標を設定するだけでなく、まず仮説を明確にすることが大事である。しかも、目の前のことを優先せずに、中長期の目標達成に取り組むためには、「規律の徹底」が欠かせないことをジェフ・ベゾスは述べている。

なぜ経営陣が「よくわかった」と言わないのか

製造業大手のA社の経営陣は、新型コロナの影響で海外事業の事業環境が大きく変化したため、事業の選択と集中が必要と考えていた。経営陣から事業戦略の修正を指示された事業部では、新たな戦略を検討したものの、財務数値中心の予測となり、経営陣にリスクをうまく伝えることができずに困っていた。