その問題は、経営陣が既存事業の経験しかなく、新事業を理解できないことだった。「おもしろそうな提案だけど、よくわからないね」という状況に陥ったのである。既存事業なら、これぐらい成功しそうだな、と経営陣が想定できるのだが、それができない。困ったB社の経営陣は、今まで以上に提案部署の意見をよく聞いてみることにした。

すると、このような会話がくり返された。

「大丈夫です」「いや、何がどう大丈夫なのかを聞いているのだが」

「がんばります」「それはそうでしょう」

「私たちのことを信じてください」「もちろん信じていますよ」

B社の経営陣は、コーポレートガバナンスの観点から、これはまずいぞ、と考えた。

そこで、B社の経営陣は、提案部署に対して、経営陣の代わりに重要仮説を質問する部隊を本社につくったのである。

「なぜこんなに儲かるんですか」

「こうならない場合はどうするのですか」

「数字もありがたいのですが、何をするのか、目に浮かぶように教えてください」

伝え方にもひと工夫を

提案部署は、自分たちの提案がベストであるという自負があり、しかも、本社は何もわかっていないと考える人も多く、反発が強かった。そこで、経営陣の命を受けた調査部隊は、現場の部署と話をするときに次のような説明をすることにした。

「何でお前ごときの質問に答えなきゃならないんだとおっしゃいますが、私も経営陣に説明しなければならないのです」

「お前は俺の敵か味方か、はっきりしろとおっしゃいますが、敵でも味方でもなく、重要仮説を質問することはオフィシャルな仕事なのです」