戦略目標達成のためには、まず仮説を明確にすること、そして仮説が実現するようにマネジメントすることが、DDPの要点である。

DDPでは、事業に関する「仮説」と「知識」の割合に注目することが強調されている。新事業や新製品開発・M&A等における戦略目標は、新たな取り組みであるがゆえに、「仮説」の割合が高く「知識」の割合が低い。DDPによると、「仮説」の割合が高いまま事業を進めると失敗(大きな損失が生じる)しやすいので、「仮説」を「知識」に変えていく行動、例えば想定顧客に関する調査であったり、試作品による仮説検証であったり、段階的出資等が必要となる。

このような「仮説」を「知識」に変えていく行動の目的は、「仮説」の外れがもたらす損失を最小化して、利益を最大化することである。マグレイスのいう「仮説」は、「金がかかってリスクも大きい絵空事」とは異なり、現実的にリスクに向き合って早く行動し、早く誤りを修正するためのものなのだ。

早く誤りを修正するメリットは、大きな損失を避けることだけではない。新たな事業機会に気づき、より高い戦略目標を追求する意思決定のタイミングを逃さないことも、大きなメリットである。

企業の成長は、基本的に新たな顧客と新たな製品・サービスによってもたらされる。つまり、成長を追求することは、仮説の割合がおのずと高まる状況になる。仮説の割合が高いまま事業を進めて大きな損失が生じることを避け、より高い戦略目標を追求するために、まず仮説を明確にし、そして仮説が実現するようにマネジメントすることが大事なのだ。

まず「仮説の明確化」から

近年、サステナビリティが注目されていることもあり、今から5年後のビジョン、あるいは2030年を見すえる計画といった中長期の財務目標を掲げる会社が増えている。だが、その財務目標を達成するために、どのような行動が実行されているかが、肝心である。社員には、「なんだか、高い目標だなあ」と他人事のように受け取られていないだろうか。