田内学(以下、田内):後藤さんは最近『転換の時代を生き抜く 投資の教科書』という本を発表されました。僕も昨年『きみのお金は誰のため――ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』という本を出しました。最近、お金や投資の本がすごく増えているように感じています。

後藤達也(以下、後藤):今年から新NISAも始まりましたし、日経平均株価も史上最高値を突破したりと、一種のブームのようなものが起きているように感じています。

田内:ただ、今、本屋さんの棚にあふれている本の中には、「このタイミングで、投資しなきゃまずい」と煽っている本が多いと感じています。ちょっとした違和感というか、危機感みたいものを覚えています。

こういう煽りに乗って投資を始めると、中にはうまくいく人もいるかもしれないけれど、煽られて始めた結果、損をしてしまう人も多数出てしまいそうです。「危ないな」と感じてしまうのです。

後藤:私も煽りには賛同できないし、リスクがあることもしっかり伝えるべきだとは考えています。

ただ、日本ではこれまで、投資にしても資産形成にしても、あまりに関心が抱かれてこなかったように思います。

後藤氏「”ボーっとしてるとやばい”という切迫感が」

後藤:今は株高だし、新NISAも始まりました。またGAFAやNVIDIAなど、イメージの湧きやすいすごい企業が存在感を増していたり、円安が進んでインフレにもなっているので、「ボーっとしてると、やばい」という切迫感が高まりつつあるように思います。その結果、投資や資産形成を意識しようという人が、過去数十年の中で圧倒的に多くなったというか、増えるいろんな条件が揃ってきているのだと思います。

この流れに乗って、国民も自分の資産をノーリスクの預貯金に固定するだけではなく、投資にもある程度ふりわけていく流れができればいいなとは、私は思っています。

ただ、一方でこういう条件が揃って新規参入者が増える時期には、はずみがつきすぎて、とんでもないリスクの取り方をしてしまったり、手を出してはいけないような金融商品に手を出して、大けがをしてしまう人が現れるのも確かです。

特に大きく構造転換するときには、大げさに物事を言う人が出てくるし、そういう人のほうが、SNSにしてもYouTubeにしても「いいね」やアクセスを取りやすいんですよね。その結果「もっと見てもらいたい」とさらに大げさになっていって、場合によっては誇張や嘘が蔓延してしまうことにもなりかねません。