田内:銀行が取れないリスクを、個人が取るっていうことですか。

後藤:そうですよね。そもそも銀行って基本、そんなに海外には投資できないですし。

後藤氏は銀行の課題についても指摘する(撮影:今井康一)

田内:だとすると銀行の存在意義って昔よりも小さくなっていますよね。

後藤:銀行の仕事はお金を集めて融資するということだけではなく、フィンテックとかも含めていろんなサービスがあるので、そこでフィービジネスをどう広げていくかは課題だと思います。

いずれにせよ、国民から預金でお金を集めて、日本国内のお金の足りない企業や個人に貸すというのは、ビジネスとしてはどう考えても時代遅れですし、これからもシュリンクするでしょう。

田内氏「円安は日本経済の大きなリスクになる」

――最近の経済トピックスで、気になることはありますか?

田内:僕は為替レートが気になります。

後藤:為替レートもいろいろな論点があると思いますが、田内さんのご関心はどういうところですか?

田内:ここ数年、急激に円安が進みました。こういう状況になると、日本からの輸出が増えてもいいのに、逆に貿易赤字が膨らんでいます。貿易赤字を埋めるほどには増えていません。

一方で、都心部を中心に不動産価格が急騰し、数年前に比較して売り出し価格が倍になっている物件も珍しくなくなっています。

為替レートが気になると語る田内氏(撮影:今井康一)

知り合いから聞いた話ですが、「こんな値段で、買う人がいるのかな?」と疑念を持っていた物件に引き合いが10件もあって、内見に案内したらすべてのグループが中国本土か台湾の人だったとのことです。

為替が円安に振れると、海外の人の目には日本の不動産が割安に映るので、どんどん価格が上がってしまいます。不動産業界にとっては喜ばしいことかもしれませんが、日本で暮らしている僕たちにとっては買いにくくなってしまうだけなので、決して喜ばしいことではありません。