人は良いことがあったときに何かを投稿しようと思うよりも、何かしら不満を感じた際にそれを吐き出すために投稿しようと思いがちだ。そのため、クチコミはその性質上ネガティブなものに偏る傾向がある。Googleマップのクチコミは、具体的なエピソードが書かれている場合もあるが、抽象的な内容で特に根拠を示さず「不満を覚えた。」といった感想めいた内容が記載されている場合も多い。

Googleは、Legalヘルプというページで「法律に違反している、またはお客様の権利を侵害していると思われるコンテンツをGoogleサービスで見つけた場合は、Googleにお知らせください。Googleではそのコンテンツを審査にかけ、コンテンツへのアクセスをブロック、制限、または削除するかどうかを検討します。」と記載している。

しかし、試したことがある方なら分かると思うが、ウェブフォームからの請求をしてもほぼ拒否されてしまう。Googleが削除するのは、事実上、裁判で削除が命じられた場合に限られる。

裁判所に「削除」を認めてもらう条件

クチコミで問題となるのは典型的には名誉毀損だが、裁判所に削除を認めてもらうための条件は厳しい。

・クチコミによって書かれた側の社会的評価の低下があること
・投稿内容に公共性、公益目的、真実性のいずれかが「ない」こと
・意見論評としての域を逸脱していること(*意見論評によるものの場合)

上記の点を、削除を請求する側に立証することが求められる。

そして、裁判所が削除を認める判断をする際に最も重視するのは、指摘されている内容に真実性がないこと、つまり「虚偽」といえるかどうかだ。しかし、クチコミという性質上、それが「虚偽」であることを立証することは、非常に難しい。クチコミの内容が客観的な「事実」にひもづく情報ではなく、主に主観的な「感想」や「論評」で成り立っていることが多いためだ。

「事実」に関する記載がなければ、第三者がそれを否定するための材料がそもそもないことになる。これが、削除のハードルを上げているのである。

客観的に見て素晴らしいサービス提供がされていたとしても、サービスを受けた人が主観的に満足しなかったという事情があれば、「満足できなかった」というクチコミを投稿することは十分あり得る。しかし、そのようなクチコミを投稿すること自体は、否定することはできない。